ロシアが北朝鮮に販売した武器を買い戻した理由 武器不足とされるロシア軍、北朝鮮からの購入可能性は

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北朝鮮側からも、前述した国防省談話のように「ロシア側から、北朝鮮に武器販売を要請するということはほぼありえない」という話が聞こえてくる。北朝鮮からの話を総合してみると、「ありえない」理由として、ロシアは軍事工業大国であり、弾薬や武器などは十分に保有しているし生産力もあることを第1に挙げる。

また、2000年に締結された「ロ朝友好善隣協力条約」には軍事同盟の条項がないため、両国が軍事的に何か協力するという根拠もないと説明する。

さらに、ロシアがロケット砲などでウクライナの主要インフラを攻撃している状況を指摘しつつ、「ウクライナ国民の厭戦気分を高めたり、ゼレンスキー大統領を引きずり下ろしたりすることが第1の目的だろう。むやみやたらにロケット砲などで攻撃するということではなく、ロシア軍も計算して打ち込んでいるはず。他国から買うほど不足するということはありえないのではないか」と考えているようだ。

数百万ドルでは少額・小規模

北朝鮮からロシアが武器を購入したのではないかというアメリカ政府の発表や西側メディアの報道を、ロシアメディアも報道している。その中には、北朝鮮から武器を送られたとする前述のワグネルのトップであるエフゴニー・プリゴジン氏の反応として、「われわれはポーランドを通じてアメリカ製の武器を注文している」と一蹴するシーンもある。プリゴジン氏は「北朝鮮はこれまでロシアに武器を供給していないし、そのような事実は誰もが知っている」と述べている。

北朝鮮の政治・軍事について詳しい、聖学院大学政治経済学部の宮本悟教授は、北朝鮮からロシアへの武器販売について「ありうる話だ」という。ウクライナ侵攻のためにロシアは極東地域の部隊や兵器を欧州寄りに移し、極東の守りが手薄になっているとされ、それを補強するため北朝鮮から武器を調達する可能性はある、と説明する。

一方で宮本教授は「北朝鮮の武器はもともと自国を守るためのものであって、ロシアに武器を輸出する余力はそれほど大きくない」と指摘する。報道された「数百万ドル」という調達金額も、軍事的には非常に小規模なものでしかない。「これでロシアが武器不足に陥っていると判断するのは難しい」という。

北朝鮮製の武器について「確認できる限り、これまで北朝鮮からロシアへ武器を直接輸出したことはない。ただ、ロシア製の武器を使うキューバなどの国に、北朝鮮が武器を輸出したという例は枚挙にいとまがない。アジアやアフリカ諸国では、北朝鮮製武器は高く評価されている」(宮本教授)ようだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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