核兵器しか選択肢にない北朝鮮という危険な存在 小此木・慶大名誉教授に聞く北朝鮮の抑止戦略

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北朝鮮は2013年に「経済建設と核武力開発の並進路線」という方針を掲げた。これは経済建設と核兵器開発の2つを同時に進めるという意味合いだったが、通常戦力に向けられていた資本を核開発や経済活動に回すという意味もあった。だが、そのあおりで通常兵器が使えなくなっているのだろう。

――一方で、韓国や在韓米軍は合同の軍事演習を活発に行うようになりました。

韓国からの攻撃を通常兵器ではカバーしきれなくなっているのが北朝鮮の現状なのかも知れない。これは、何か武力衝突が発生したら韓国やアメリカ軍に対し核兵器で威嚇、すなわち使用せざるを得ない状況にあると言えるだろう。

これは非常に危険だ。局地的な武力衝突が起きた時点で北朝鮮は核を使用し、さらに戦略核の使用にまで発展しやすいということだ。

核兵器を使用せざるを得ない

北朝鮮にとっても、危険な選択だけがあるという状況だ。第8回党大会での核ドクトリンのままで突き進めば、武力衝突が発生し通常兵力では太刀打ちできないとなれば、核兵器を使用せざるを得ない。一方で核兵器を使用しなければ、これまでの政策の実効性のなさを国民に見せてしまうことになる。

2023年の米韓合同軍事演習では、上陸作戦が組み込まれていた。韓国側はあくまでも通常兵器での対応がメインだが、北朝鮮は核兵器シナリオがメインとなっている。これは台湾有事よりも危険な状態だ。「核兵器を使うしかない」と北朝鮮が言っているに等しい。

おこのぎ・まさお/1945年群馬県生まれ。慶應義塾大学法学部卒、同大大学院博士課程単位取得退学。同大教授、法学部長などを務める。『朝鮮分断の起源:独立と統一の相克』『朝鮮戦争―米国の介入過程』など著書多数(写真・今井康一)

――日米韓はどう対処すればいいでしょうか。

しばらくは前述したような状況が続く。韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)政権にとっては、アメリカの抑止力に頼る「拡大抑止」しかないだろう。

アメリカとしても日米韓の同盟関係で北朝鮮に対応せざるを得ないのが現状だ。拡大抑止は3カ国による「統合抑止」であり、それがうまく機能するには、日本、アメリカ、韓国が結束を強めるほかない。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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