岸田首相のメッセージに反応した北朝鮮の意図 岸田首相は状況打開へ決断力を示せるか

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2002年9月、首脳会談を終えて「日朝共同宣言」に署名し、握手する小泉純一郎首相(当時、左)と北朝鮮の金正日労働党総書記。岸田・金正恩の両首脳による会談は可能だろうか(写真・時事、代表撮影)

米中対立や北朝鮮による軍事挑発が続き、緊張状態が続く東アジア情勢。その中で、日朝間で少しだけ前向きなことが生じた。長らくの緊張状態が続く日朝関係は動き出すか――。

きっかけは5月27日の、岸田文雄首相の発言だ。岸田首相は同日に開催された「全拉致被害者の即時一括帰国を求める国民大集会」でのあいさつで、北朝鮮に向けて次のようなメッセージを発信した。

「日朝間の実りある関係を樹立することは、日朝双方の利益に合致するとともに、地球の平和と安定に大きく寄与する」
「現在の状況が長引けば長引くほど、日朝が新しい関係を築こうとしてもその実現は困難になる」
「私自身(岸田首相)、わが国自身が主体的に動き、トップ同士の関係を構築していくことが極めて重要であると考える」
「私自身、条件をつけずにいつでも金正恩(キム・ジョンウン)委員長(総書記)と直接向き合う決意であり、行動していく。早期の首脳会談実現に向けて、自分が直轄して、ハイレベルでの協議を行っていきたい」
「大局観に基づき、地域や国際社会の平和と安定、日朝双方のため、自ら決断していく」

「無条件」が北朝鮮に通じるか

2002年に当時の小泉純一郎首相と北朝鮮の金正日総書記との日朝首脳会談をきっかけに一部の拉致被害者の帰国が実現してから20年超。しかしその後、拉致問題は何ら進展していないと言っても過言ではない。

一読すると、今回の岸田首相の発言も、これまでの故・安倍晋三元首相や菅義偉前首相の拉致問題に関する発言とそれほど変わらないようにみえる。安倍元首相も在任中、数度にわたって「無条件で(あるいは前提条件なしで)首脳会談の用意がある」との発言を繰り返してきた。

今回、北朝鮮はこれまでとは違う反応をした。岸田首相の発言からわずか2日後の5月29日、北朝鮮外務省の朴尚吉(パク・サンギル)外務次官による異例の早さでの談話が発表された。しかも、「日朝両国が互いに会うことができない理由はないというのが共和国(北朝鮮)の立場だ」と述べた点が目を引く。

一方で、朴外務次官は談話の中で、「前提条件のない首脳会談というが、(北朝鮮からすれば)解決済みの拉致問題と、北朝鮮の自衛権の問題(ミサイルや核実験などの軍事的行為)の解決とやらを云々として日朝関係改善の前提条件としている」と批判した。

すなわち、前述したような安倍氏らこれまでの首相経験者の発言と同じ程度の重みしかないのではないかと疑っているのだろう。「同じことを言っても具体的な行動がなければ、関係改善はおろか対話もない」と牽制しているのだ。

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