岸田首相のメッセージに反応した北朝鮮の意図 岸田首相は状況打開へ決断力を示せるか

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その前段階の行動とは何か。安倍首相による「前提条件なしでの首脳会談」発言からしばらくの間は、朝鮮学校系教育機関への高校教育無償化や幼稚園・保育園無償化の適用除外を解除すれば北朝鮮も動き出すのではとみられてきた。ほかには、北朝鮮人士の日本との往来の緩和、また日本独自の対北朝鮮経済制裁の緩和が必要だとも言われてきた。

岸田首相は、5月27日の発言通りに「私直轄のハイレベルの協議」を行っていくために、「大局観に基づき、あらゆる障害を乗り越えて」北朝鮮との対話へ乗り出すことができるか。先に述べた北朝鮮側の目的や日本側の行動は 、いずれも自民党内はもとより、日本国内から強い反発が予想されるものばかりだ。

日本単独で実のある交渉は可能か

また、北朝鮮との対話や、対話の前の交渉が日本国内でどう受け止められ、どのような影響を与えるかも未知数だ。2023年2月に出版された『安倍晋三回顧録』で安倍元首相は、「アメリカから強いプレッシャーがかからないと北朝鮮は動かないのでは」との質問に「それは大きな要素だ」と答えている(同書、141ページ)。アメリカという要素を岸田首相はどう考えているのか。

「交渉をしないことも交渉の一つ」という言い方がある。得られるものがなければ、結局は対話しないほうがいい、と岸田首相は判断するかもしれない。おそらく、安倍元首相はそういう結論に至っていたのだろう。

安倍元首相はまた、北朝鮮外交では「使えるルートはすべて使う。そして、交渉の情報はすべて私に集約し、判断は私がする。そういう考えで臨んでいた」という(同書、298ページ)。北朝鮮に対して、岸田首相は安倍元首相とは違った戦略・戦術、そして覚悟を持って北朝鮮との対話を呼びかけたのか。いずれにしろボールは今、岸田首相の掌中にある。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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