オンワード急回復「百貨店アパレル」の意外な健闘 11年ぶり活況のカギは「百貨店依存」からの改革

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オンワードの上方修正は第1四半期の超過分を反映したのみで、経営環境が不透明として下期の計画は据え置いている。

アパレルメーカー大手はオンワードだけでなく、6月30日に決算発表した三陽商会も上方修正を行い、順調な滑り出しを切った。三陽商会は50年近くにわたり、イギリス・バーバリー社とのライセンス契約を結び、高級ブランドで知られたバーバリーの普及版ブランドを日本で展開していた。

だが2015年6月に英バーバリー社とのライセンス契約が打ち切られた途端に業績は急悪化。三陽商会の2016年12月期は、売上高が30.6%減の676億円、営業利益は前期65億円から84億円の赤字に転落した。三陽商会はバーバリー喪失からの黒字復帰を待たずにコロナ禍へ突入。2022年2月期まで、6期連続の営業赤字に沈んでいた。

脱・百貨店依存が各社の課題

2020年5月、スポーツやアウトドアウェアの「ゴールドウィン」を再建した大江伸治氏が三陽商会の社長に就任すると構造改革に乗り出した。商品の絞り込みや在庫圧縮、販売時の値引きを減らした定価販売を徹底した。

一連の取り組みが実を結び、三陽商会も2023年2月期に営業黒字へ復帰。今2024年2月期第1四半期(3~5月)も、百貨店の好調などで当初の予測を上回る増収増益で着地した。通期の業績予想を売上高610億円(前期比4.7%増)、営業利益27億円(同20.8%増)へ上方修正している。

明るい兆しが出てきた百貨店アパレルだが、長年の課題である「百貨店依存からの脱却」は途上だ。自社ECに注力するオンワードは、国内売上高に占めるEC比率が28%となり(2023年5月末時点)、今後も自社ECを利用した商品取り寄せサービスで実店舗とECの相互送客を強化する。

三陽商会も百貨店に加え、直営店やアウトレットの出店で客層拡大を図っている。足元は百貨店復活の好景気に沸くアパレル各社だが、長期を見据えた改革は続くことになりそうだ。

山﨑 理子 東洋経済 記者

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やまざき りこ / Riko Yamazaki

埼玉県出身。大学では中国語を専攻、在学中に国立台湾師範大学に留学。2021年東洋経済新報社に入社し、現在小売り・アパレルを担当。趣味はテレビドラマのロケ地巡りなど。

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