東急本店閉店の水面下でうごめく「外商」争奪戦 コロナ禍を機に電鉄系百貨店の「撤退」加速へ

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東急百貨店閉店の瞬間
最終日の営業を終え、シャッターを降ろした東急百貨店本店。閉店時には多くの買い物客が集まり、最後の瞬間を見届けた(記者撮影)

「55年間の長きにわたり、皆様に支えられて営業を続けることができました。ありがとうございました」

東京・渋谷にある東急百貨店本店が1月31日、閉店した。稲葉満宏店長があいさつし、午後7時に正面玄関のシャッターが降ろされると、営業最終日に集まった買い物客からは拍手が送られた。

「お店の最後を見届けようと来た。ここがなくなったら、どうしたらいいのか」

本店や東横店(2020年3月閉店)に30年以上通っていたという東京都世田谷区の亀山弘子さん(68)は、混雑する最終日の店内で肩を落とした。「1カ所で買い物が済むのが百貨店の魅力。東京でも百貨店がどんどん減り、高齢者が買い物を楽しめる場所がなくなっていて寂しい」と話した。

建て替え後の百貨店入居は「未定」

本店の建物は2023年春以降に解体作業が始まり、跡地にはホテルや商業施設、賃貸マンションなどが入る地上36階建ての複合ビルが2027年度に完成する予定だ。

ビルの地下1階から地上6階までは商業施設が入居する予定だが、「百貨店が入るかどうかは未定」(東急広報)という。ただ、取引先の間では「百貨店業態は終了する」(アパレル大手関係者)という前提で、今後の事業計画を練り直している企業が多い。

複合ビルの開発には、東急や東急百貨店のほか、2017年にオープンした東京・銀座の商業施設「GINZA SIX(ギンザシックス)」の開発に参画した仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ系の不動産投資会社「Lキャタルトン・リアル・エステート」も加わる。

旧松坂屋銀座店の跡地にできたギンザシックスは、従来の百貨店業態から脱却し、賃料で稼ぐテナント型の運営に舵を切った。東急本店跡地の商業施設でもギンザシックスのように、欧米の高級ブランドを軸にしたテナント型のラグジュアリーモールに生まれ変わる可能性が高い。

本店を閉店する理由として、親会社である東急の広報担当者は「建物が老朽化したことに伴い、建て替える必要が生じたため」と説明する。

もともと私鉄各社がターミナル駅近辺で百貨店を展開してきたのは、沿線の住宅開発と合わせて鉄道需要を増やすためだ。ただ、近年では東急田園都市線と東京メトロ半蔵門線、小田急線と東京メトロ千代田線というように、私鉄路線と地下鉄などとの相互直通運転が一般化したことでターミナル駅での乗り換え客が減り、電鉄系百貨店の存在意義が薄れていた。

東急百貨店の業績

実際、東急百貨店の売上高も年々縮小していた。利益率も低く、2000億円以上の売上高がありながら、コロナ禍以前でさえ営業黒字は1桁台がやっとだった。

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