東急本店閉店の水面下でうごめく「外商」争奪戦 コロナ禍を機に電鉄系百貨店の「撤退」加速へ

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本店の場合は渋谷駅から少し離れた立地もあり、近年では集客に苦戦。都心の百貨店にもかかわらず週末でも来店客はまばらで、衣料品売り場ではブランドが撤退した跡地が空きスペースのままとなるありさまだった。

そこに追い打ちをかけたのが新型コロナウイルスの感染拡大だ。

鉄道利用者が減少した影響で、東急は2021年3月期に562億円の最終赤字を計上。2023年3月期の営業利益もコロナ禍前のおよそ半分にとどまる計画となっている。

閉店した東急百貨店本店の外観
閉店した東急百貨店本店の外観。2023年4月以降に解体作業が始まり、跡地に建設される複合ビルは27年度に完成する予定だ(記者撮影)

コロナ禍で経営体力が低下した鉄道会社にとって、慢性的な低収益体質である百貨店事業は大きな負担となっており、見直しがいっそう急務となっていたというわけだ。

都心の電鉄系百貨店は再開発が相次ぐ

その鉄道会社の経営姿勢を裏打ちするように、東京都心の電鉄系百貨店では再開発計画が相次いで明らかになっている。

東京・新宿の小田急百貨店新宿店は2022年10月、建て替えに伴って本館での営業を終了し、解体作業がすでに始まっている。

2029年度に完成する地上48階建ての再開発ビルの中に百貨店が入居するかどうかは未定だ。新宿駅西口では京王百貨店新宿店も建て替えを計画しているが、同様に百貨店の扱いは決まっていない。

電鉄系百貨店は、三越伊勢丹ホールディングスや高島屋など呉服屋を発祥とする「呉服屋系百貨店」と比べ、グループ内における百貨店事業の位置づけが低いことも影響している。

ある呉服屋系百貨店の幹部は「われわれは百貨店が本業であり、数百年続くのれんを守らなければいけない。鉄道が本業である電鉄系百貨店とは、百貨店事業に対するスタンスがそもそも異なる」と言う。

また、その幹部は「都心の好立地の不動産を持つ中で、百貨店を入れるより、テナント型の商業施設などにしたほうが儲かるという考えなのだろう。電鉄本体の力が圧倒的で、本体が百貨店をやめると言えば百貨店側は何も言えない」と、電鉄系百貨店が置かれた立場をおもんぱかる。

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