百貨店の復調を支える「高額品バブル」の持続力 好調でも利益率が高くない商品ばかりという悩みも

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伊勢丹新宿本店の外観
三越伊勢丹の店舗の中でもとくに好調なのが伊勢丹新宿本店。2022年8月の売上高は免税売上高を含めても2019年8月を10%上回り、8月としては過去最高を記録した(記者撮影)

「数千万円以上の商品でも飛ぶように売れる。高額品消費の勢いはそろそろ減速するかと思っていたが、衰える気配は今のところない」。百貨店大手の関係者は、コロナ禍でずっと続いてきた“高額品バブル”の持続力に驚きを隠さない。

百貨店各社の業績回復が鮮明になってきた。百貨店大手5社が発表した8月の既存店売上高は、全社が前年同月比20~40%増の大幅増収となった。新型コロナ感染者数の「第7波」によって来店客数が減少するなどの影響が出ているものの、高額品消費の盛況による客単価の上昇が下支えしている。

国内客の消費はコロナ前を上回る勢い

業界首位の三越伊勢丹ホールディングス(HD)が発表した8月の既存店売上高は前年同月比33.6%増となり、コロナ禍の影響がなかった2019年8月比では8.4%減だった。とくに首都圏店舗では2019年度比で3.9%減まで回復しており、訪日外国人観光客による免税売上高を除いた国内客だけではコロナ禍前を上回る状況が続いている。

業績回復を牽引するのは、海外のラグジュアリーブランドや時計、宝飾品、現代アートなどの高額品だ。中間所得層による消費回復が遅れる中、買っているのはやはり富裕層。三越伊勢丹HDによると、2021年度に年間購入金額が100万円以上だった顧客に限ると、8月の購入額は2019年度と比べても2割増という勢いだ。

高額品消費の原動力となっているのが、コロナ禍で海外旅行や外食が制限されたことで生まれた余剰資金だ。富裕層は時計や現代アートなどを投資目的で購入する事例も多いという。

コロナ禍の2年間、緊急事態宣言下で臨時休業や時短営業を強いられ、未曾有の危機に陥った百貨店業界。経済活動の本格的な再開が進む中、高額品の爆売れにほくほく顔かと思いきや、手放しで喜べる状況ではないようだ。

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