百貨店の復調を支える「高額品バブル」の持続力 好調でも利益率が高くない商品ばかりという悩みも

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「利益率が低い商品カテゴリーばかりが売れている。利益率の高い国内ブランドのアパレルがもう少し回復してくれるといいのだが……」。ある百貨店関係者は複雑な表情を浮かべる。

百貨店が取り扱う商品別の粗利益率は、婦人服や紳士服といった衣料品と化粧品が最も高い部類に入る。例えば、三越伊勢丹HDの2022年3月期の決算資料によると、衣料品の粗利益率が30.9%、化粧品が33.9%だったのに対して、食料品は24.1%と低い。

各社とも決算で海外の高級ブランドに限った粗利益率を公表していないが、一般的に食料品よりやや高い程度とみられる。

商品ごとの利益率の違いについて、別の百貨店関係者は「海外の高級ブランドは百貨店の顔として集客が期待され、百貨店側から出店をオファーする場合が多い。(商品売り上げに占める百貨店側の取り分である)売り上げ歩率を相対的に低く設定したり、出店時の内装費用も負担したりする」と明かす。つまり、高級ブランドの入居を図るため、百貨店側の実入り(歩率)を削っている影響があるといえる。

頼みのアパレルは回復スピードが遅い

一方、ボリュームゾーンである国内ブランドのアパレルは「商品の価値に対して価格が割高」(前出の百貨店関係者)で、歩率も高めに設定できてきた経緯がある。

粗利益率が低い高級ブランドや食料品がコロナ禍で終始好調である一方、これまで百貨店の稼ぎ頭だった中間層向けアパレルの回復スピードは遅い。アパレルブランドが百貨店内の店舗を閉店したり、生産量を抑制したりした影響もあって、売り上げはコロナ禍前と比べて7~8割程度の水準だという。

また、訪日外国人観光客の回復が大幅に遅れていることも誤算だ。日本への入国条件が厳しいうえ、かつては免税売上高の8割程度を占めた中国のゼロコロナ政策が響く。中国からの訪日客は利益率の高い化粧品をこぞって買っていたため、“爆買い”の不在は利益の減少に直結する。

その結果、百貨店各社の粗利益率はコロナ禍前と比べて大きく低下している。高島屋の国内百貨店事業では、2021年度の粗利益率は2019年度比で1.25%も低下。2021年度の売上高を基準にすると、80億円程度の利益を失った計算になる。阪急阪神百貨店でも、2022年4~6月期の粗利益率は2018年度と比べて2.1%低下した。

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