オンワード急回復「百貨店アパレル」の意外な健闘 11年ぶり活況のカギは「百貨店依存」からの改革
オンワードは百貨店の集客力低下を受けて、2019年から構造改革を進めてきた。国内外の600店舗を閉鎖し、ネット通販(EC)への投資に舵を切った。EC専売ブランドの立ち上げや、在庫管理の強化などを進めたが、コロナ禍に突入したことで実店舗の客数減少の影響が大きく焼け石に水。苦しい時期が続いた。
2022年後半から外出制限が緩和されて実店舗への客数が回復してくると、これまでオンワードが着手してきた実店舗とECの一体化戦略が効果を現してきた。代表例が「クリック&トライ」だ。同社のECサイトで取り扱う商品を実店舗に取り寄せ、その場で試着と購入ができるサービスである。対応店舗は5月末時点で360店舗、51%の店舗に導入している。
クリック&トライは自社ECと連結しているため、導入店舗では実質的にオンワードが展開するほぼすべての商品を取り扱えるようになることが強み。オンワードによると、クリック&トライ導入店舗の既存店売上高(3~5月)はコロナ前の2019年同期比で13%増収だった。
一方で未導入店舗の既存店売上高は同13%減であり、一定の効果をあげているとみられる。今後も導入店舗を増やしていく方針だ。
非アパレル事業も牽引
2024年2月期を上方修正した理由は、これだけにとどまらない。主力の国内アパレル事業に加え、ペット関連用品の「ペットパラダイス」や、化粧品が好調に推移しているバレエ・フィットネス用品の「チャコット」も大幅増収で着地した。
これら増収効果と商品在庫管理の効率化が進んだことで、売上高に対する粗利益率は連結で58.1%(前年同期は55.5%)と2.6ポイントも上昇。好循環を生み出している。
コロナ禍で経営が悪化した海外はなお2.5億円の営業赤字だが、国内でクリック&トライなどを活用したブランド複合店舗により運営効率が改善し、売上高に対する販管費率が47.3%(前年同期51.0%)まで低下。営業利益は前年同期比で2.6倍の53億円と急改善を遂げることとなった。
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