栗山氏が感心「大谷翔平のヌートバーへの心配り」 ヌートバーを侍ジャパンに受け入れた経緯

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練習に打ち込むヌートバーは、自分のルーティンをしっかりと持っていて、全体練習のなかで自分がやるべきことを消化していました。メジャーリーガーといってもまだ若く、これから経験を積んでいく選手ですが、「大丈夫だ! やってくれる!」との印象を与えてくれたのです。

忠恕

中国春秋時代の思想家・孔子は、「自分は人生で貫き通してきたものがある。それは忠恕の二文字だ」と話しました。

「忠」とは自分の良心に真っ直ぐに従うことです。「恕」は他人の身の上を思いやり、自分のことのように親身になって思いやることです。

3月3、4日に名古屋でドラゴンズと試合をしたのち大阪へ移り、6日にタイガース、7日にバファローズとの強化試合に臨みました。

名古屋での強化試合では、ファンのみなさんの期待の大きさに触れることができました。バスで球場入りする際に、沿道がファンのみなさんで埋め尽くされていたのです。選手、監督、あるいは取材者として数多く球場入りを経験してきましたが、これほど歓迎されたことはありません。本当に多くの人たちが楽しみにしてくれていると実感しました。

同時に、移動が大変になるのでは、との懸念が生じました。しかし、名古屋から大阪への新幹線での移動は、駅員さんと警察のみなさんの連携で実にスムーズでした。一般とは違う動線へ誘導してもらい、混乱を引き起こすことなく移動できました。

名古屋駅の待合室に、ホワイトボードがありました。部屋を出るときに、私のよく知るサインが書かれていました。翔平です。

彼は茶目っ気のある人間で、ユーモラスな行動でみんなを和ませます。自分たちが安全に移動できるために、駅員さんと警察のみなさんが力を尽くしてくれている。彼らの頑張りを少しでも労えたら、という気持ちだったのでしょう。それに加えて、駅員さんを驚かせたかったのかもしれません。いずれにしても、「忠恕」の心を育んでいるからこそできることです。

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移動中はスーツを着用しますが、翔平は私服でした。ヌートバーの移動用スーツが間に合っていなかったので、翔平もスーツではなく私服を選んだのです。「たっちゃん」をチームに溶け込ませるための、彼なりの心配りでした。

ヌートバーを独りぼっちにしなかった翔平の行動は、心温まるものでした。「さすがだなあ」と感心させられましたが、決して特別なことではありません。相手の立場になって考えれば、気づくことができるものです。

気づいたら、行動へ移す。できるか、できないかではなく、やるか、やらないか。

会社の同僚や後輩が困っていたら、学校の友だちが悩んでいたら、相手の身になって考えてみましょう。あなたの行動が相手にとっての正解ではなくても、親身に考えた末の行動です。相手の心に明るい灯が点るでしょう。

栗山 英樹 北海道日本ハムファイターズCBO

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くりやま ひでき / Hideki Kuriyama

1961年、東京都生まれ。東京学芸大学を経て、1984年に内野手としてヤクルト・スワローズに入団。1989年にはゴールデングラブ賞を獲得するなど活躍したが、1990年に怪我や病気が重なり引退。引退後は野球解説者、スポーツジャーナリストに転身した。2011年11月、北海道日本ハムファイターズの監督に就任。翌年、監督1年目でパ・リーグ制覇。2016年には2度目のリーグ制覇、そして日本一に導いた。2021年まで監督を10年務めた後、2022年から日本代表監督に就任。2023年3月のWBCでは、決勝で米国を破り世界一に輝いた。2024年から、ファイターズ最高責任者であるチーフ・ベースボール・オフィサー(CBO)を務める。

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