「花子とアン」村岡花子のユニークな英語学習術 留学経験なしで英語をマスターできた理由とは

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50. I write a letter to my home. 家族への手紙を書きます。
51. We have a supper at half past five. 5時半に夕食をいただきます。
52. We have evening prayer after supper. 食事が終わると夕拝に参列します。
53. We begin to study at quarter past six. 6時15分から勉強を始めます。
54. The little girls go to bed early. 小さい生徒たちは一足早く就寝します。
55. The big girls go upstairs at nine o’clock. 9時になると大きい生徒たちも上の階へ戻ります。
56. We get ready for bed. 床につく準備をします。
57. I say my prayers before getting into bed. 床につく前にお祈りをします。
58. The last bell rings at half past nine. 9時半に最後のベルが鳴ります。
59. One of the foreign teachers comes to our rooms to say “Good night”. 西洋人の先生が「おやすみなさい」を言いに私たちの部屋にいらっしゃいます。
60. We all sleep quietly until the rising bell rings again. 起床のベルが鳴るまで静かに眠ります。
引用:東洋英和女学院『東洋英和女学院百年史』1984

図書室の本を読みつくす

寄宿舎では、届けを出せば週末の外泊も許されました。ほかの寄宿生たちが嬉々として実家に帰る一方で、花子は「父に報告できる成果も電車賃もない」と言い、週末は誰もいない寄宿舎で過ごすことが多かったといいます。

そのときに花子が夢中になったのが、学校の図書室の蔵書でした。大半が洋書でしたが、16歳ごろにはすべて読み尽くしてしまったのだとか。 『若草物語』や『ロビンソン・クルーソー』といった児童文学だけでなく、19世紀のイギリスの詩人テニスンの『国王牧歌』なども読み、ロマンチックで格調高い英語にうっとりしていました。『国王牧歌』では、エレーンという婚約者がいながら、ランスロットがアーサー王の妃であるギニビアと惹かれ合い、それを知ったエレーンは悲しみのうちに死んでしまうという場面が描かれます。そのときのギニビアの複雑な心境を、花子が翻訳した一節が残っています。

乙女の恋は栄光の冠、人妻の恋はいばらの十字架、燃えさかる恋の焔(ほのお)に二つはなかろうものを、人の世のおきては悲しくも冷たい。 

花子の「腹心の友」であった8歳年上の同級生・柳原燁子 (のちの白蓮)は、この一節を覚えており、のちに「自分がこの物語と同じような運命をたどるとは、夢にも思わなかった」と語りました(燁子は炭鉱王だった夫と絶縁し、若い恋人と駆け落ちしました)。

必需品は「聖書」と「英英辞典」

花子の手元につねにあったのが、聖書と、夫からもらった英英辞典の『ウェブスター大辞典』という2つのアイテムでした。

貧しい行商の家で8人きょうだいの長女として生まれた花子。そのような境遇もあり、「神の名のもとに人は平等」という東洋英和が掲げるキリスト教の精神には共鳴するところがあったのでしょう。花子は聖書を心の支えとしてそばに置き、赤鉛筆で線を引きながら大切に読んでいました。

一方で、花子は「西洋人の思考や生活の基盤となっている聖書は、信仰の有無にかかわらず、英米文学を研究する人には必要不可欠」であると語っており、旧約聖書の「箴言」や「詩篇」の美しい英語を暗唱していたといいます。実際に、聖書はキリスト教の聖典であるとともに、各時代の書き手が寄稿した文学集という顔も持ち、シェイクスピアなどの巨匠の作品にも大きな影響を与えています。花子にとって聖書は心のパートナーであると同時に、英米文化について造詣を深めるうえで必要なアイテムだったのです。

次ページ英英辞典を愛読書とし、未知の英単語との遭遇を楽しむ
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