支配層の忠誠を金で買う「プーチン」の怯える日々 粛清に踏み切れない脆弱な支配基盤

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プーチンは、23年前に権力を握って以来、国の最重要資産の管理の一部を旧知の友人に託し、政府の枢要な役職に元ボディーガードなど自身に忠誠を誓う人物を配置してきた。

プーチンをはじめ政府幹部の警護を主な任務とするロシア連邦警護庁(ロシア語の頭文字でFSOとも呼ばれる)は何万人という隊員を擁し、ロシアの別の治安機関でプーチン体制の転覆を狙う謀略が練られていないかの監視においても、ますます大きな役割を担うようになっている。

昨年FSOを離れて亡命した人物によると、FSOの組織はプーチンが口にするものを検査する生物安全センターも含め各方面に広がっている。プーチンは、自身の警護体制にとくに注意を払っていると考えられている。

2017年に公開されたインタビューで、自身の安全確保について問われたプーチンは、キューバのフィデル・カストロ議長から、数多くの暗殺を未遂に終わらせることができたのは「自身の警護体制を常に自分で管理していたからだ」という話を聞いた、と応じている。

元ボディーガード率いる国家親衛隊を武装強化

反乱後のプーチンの行動からは、同氏が自身の身の安全と権力を維持するために冷静に計算している様子が見て取れる。プーチンは6月24日の反乱を止めるために妥協した。プリゴジンとワグネルの戦闘員は、複数のロシア軍機を撃墜し、100万人都市を掌握し、モスクワまで約200キロメートルのところまで進軍したにもかかわらず、ベラルーシに向かえば身の安全を約束するとしたのだ。

続いてプーチンは、クレムリンの大聖堂前の広場という神聖視される場所で式典を開催して交通警察まで含む自らの警護組織を大々的に賞賛、隊員の「決意と勇気」を称えた。

次ページ敵を仕留めるのにゆっくりと計画を練るプーチン
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