支配層の忠誠を金で買う「プーチン」の怯える日々 粛清に踏み切れない脆弱な支配基盤
危機の中で国民を愛する姿勢を示そうと、自身の新型コロナ感染症対策におそらく初めて背く形で一般の人々と触れ合った。ロシア南部でプーチンを大歓迎する人混みの中に入っていき、固い握手を交わし、ある若い女性の額にキスまでした。
プーチンは、自身の敵を仕留めるのにじっくりと計画を練る人物として知られている。一方で、今回の反乱に関与した可能性のある人物やプリゴジンに近い人物の逮捕は、まだ確認されていない。
兵士や警察官らに対する昇給は以前から発表されていたものだが、政治学者のシュルマンによると、それが反乱のわずか数日後というタイミングで実施されたのは偶然とは思われない。
さらにプーチンは、自身に最も忠実な治安責任者の1人に対して、さらなる武器の割り当てを約束したようだ。プーチンの元ボディーガードで、ロシア国家親衛隊を率いるヴィクトル・ゾロトフは先日、プーチンが自身の部隊にさらなる戦車と大砲の割り当てを約束したと自慢げに語った。
「プリゴジンの乱」が不満分子に与える影響
もっとも、軍や治安組織に予算や装備のさらなる割り当てで報いることにはリスクも伴う。政治学者のゴロソフは、プリゴジンが反乱を起こす様子を目撃したことから、冷や飯を食わされた不満分子が自らも反乱を起こそうとする誘惑に駆られる可能性が出てくると指摘する。
ゴロソフが言う。「それまで反乱などあり得ないと思っていても、プリゴジンの反乱が展開する様子を実際に目の当たりにしたことで、反乱は非現実的なものではないと考える勢力が治安組織内で別に現れてくる可能性は十分に考えられる」。
(執筆:Anton Troianovski記者)
(C)2023 The New York Times
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