「長女のほうは主人と似て頑なです。父親である主人を許そうとせず、大学を出るまで養ってもらってきたことへの感謝の言葉もありません。母親との一体感が強いのでしょう。『彼女も社会に出て働くようになったら考え方が変わってくるよ』と励ましていたら、2年前にようやく久しぶりに再会できたようです。新しい配偶者である私とは会いたくないとのことですが、私もそれでかまいませんよ」
「長男と次女はカラッとした性格で、語学留学や就職活動のサポートを私に求めて来ましたのでいろいろお世話してあげました。でも、その子たちがかわいいという感情は正直言ってないですね。主人のためにしてあげているにすぎません」
長女への住宅資金援助をめぐり口論に
修さんとは財布は別々だという弘子さんは、大人の余裕を示し続けてきた。結婚以来、修さんと大きな喧嘩をしたこともなかった。ところが、今年になって言い争いの種が生まれた。現在はロンドンに住み暮らしている長女が「結婚して家を建てることになったのでお金を貸してほしい」と修さんに言って来たことが発端だ。
「最近まで連絡を取ることすら拒んできたのに、ずいぶん虫のいい話だなと思いました。私の感覚では20代のうちは賃貸マンションで十分。借りてまでお金を使うならば大学院などに行って自己投資すべきでしょう。
世界の主要都市で快適に住み続けるためには、夫婦ともに高学歴・高収入であることがグローバル経済の趨勢だからです。主人の長女は大学を出てから正規の職に就いた経験すらありません。そんな甘い見通しでいいの? と感じましたね。結局、彼を憎みながらも経済的に依存しているところは母親と同じなのです」
愛娘に夫婦円満の家庭を与えてあげられなかった負い目がある修さんは、資金計画すら出さない娘にお金を渡す決意を曲げなかった。控えめながらも不満を表明する弘子さんに対しては、「どうしてそんなに厳しいのか。キミは父親から留学費用やマンションの購入費を援助してもらわなかったのか」と指摘してきた。
「それはアンフェアだと私は言いました。主人の両親から私は洋服ひとつ買ってもらったことはありませんし、主人の財産は民法上は私との共有財産です。でも、法律まで持ち出して主人ともめるのは嫌なので、『定年を迎えてお金がないのは辛いよ。私との生活を犠牲にしないでね』とお願いするに留めました。
主人も少しは耳を傾けてくれたようですが、やはり長女にお金をあげていました。生前分与だと思って納得するようにしています。幸か不幸か私たちの間には子どもができませんでした。もし子どもがいたら、わが家の財産を守るために私も鬼になっていたかもしれませんね……」
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