大谷翔平をめぐるテレビとネットの温度差のワケ 「テレビは全力だが、ネットはクール?」のなぜ

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なかでも象徴的なのは、今春に1時間拡大されて9時までの放送になった「ZIP!」。高視聴率を獲得し続ける朝ドラのほか、「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)、「ラヴィット!」(TBS系)、「めざまし8」(フジテレビ系)が一斉スタートする“8時ちょうど”のタイミングで大谷選手のニュースを放送しています。

また、その「ZIP!」のような2時間以上放送される番組では、ある程度時間を空けながら複数回扱うのは当たり前。さらに「めざましテレビ」(フジテレビ系)では「ソクホウオオタニサン!」、「スーパーJチャンネル」(テレビ朝日系)では「きょうのSHO TIME17」、「Nスタ」(TBS系)では「きょうの大谷さん」などの特別コーナーを設けて視聴者を引きつけようとする番組もあります。

言わばテレビは、「回数は多く、時間もたっぷり、内容も工夫を凝らして」という戦略。「局を挙げて全力で大谷選手のニュースを扱い、視聴率獲得につなげよう」という姿勢がうかがえます。

ネット記事は“ある時間帯”に集中

一方、ネットでも大谷選手のニュースは数こそ多いものの、テレビほど「全力」というムードはなく、業界全体では「クール」という印象すらあります。

基本的に大谷選手のニュースを報じるのはスポーツ系のネットメディアが多く、ベースとなっているのは試合の速報記事。「今日の大谷選手はどんな成績だったのか」を知らせるストレートニュースに近いものを小刻みに速報しているだけに、記事のアップは試合中から試合後の数時間に集中しています。

大谷選手のニュースはアメリカ各地との時差があるため、朝から昼すぎの時間帯に集まりやすく、「数時間で一気に消費される」のが日常。野球選手だから当然なのですが、試合以外のニュースが少ないため、それ以外の時間帯はネット記事で引き付けることは難しいとみなされがちです。

野球関連のニュースで試合の速報以上に「数字を稼げる」と言われているのは、NPBの選手出入りに関する情報。一・二軍の選手入れ替え、育成からの支配下登録やトレード関連、秋に行われるドラフト会議の先取り情報などは、それなりの数字を稼げるものとされ、噂話レベルのものも含めて量産されています。

また、「低迷しているチームの監督や選手への批判記事が数字を稼ぎやすい」のもスポーツ系ネットメディアの共通認識。実際、長年低迷している中日ドラゴンズの記事は他チームのファンからも読まれやすく、「中日の試合をあまり見ていないのに、中日の下げ記事ばかり書いている」と言われるライターもいるくらいです。つまり、ネガティブな内容のほうが書きやすく読まれやすいところがあり、ポジティブな活躍を続ける大谷選手とは真逆なのかもしれません。

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