ラーメン店主に転身した元Jリーガーの快活人生 盛田剛平が歩む異例のセカンドキャリア
配置転換にリストラ危機。サッカー人生の荒波にあらがい続け、「中年の星」となったのは38歳の時だった。
2014年のJ1。センターフォワード不足のチーム事情から、ヴァンフォーレ甲府DF盛田剛平はFWに挑戦した。その8年ぶりの再コンバートという珍事が話題となる中、自身キャリアハイとなる5ゴール(29試合)を記録した。
一度押された「FW失格」の烙印(らくいん)を引っぺがし、不死鳥のごとく甦った。競技人生の晩年に咲かせた一花。まるで人生の応援歌のようなストーリーは広く注目された。
あれから9年。あの記憶に残るストライカーは今、異色のセカンドキャリアに奮闘している。
トレードマークの笑顔で接客
「いらっしゃいませ!」
暖簾(のれん)をくぐると、元気な声が響いた。
その声の主こそ、盛田さんだった。この3月から、さいたま市北区宮原にラーメン店「盛田軒」を構えている。トレードマークの笑顔に無精ひげ。気さくな人柄も相まって、こちらのガードを一気に低くする。
そのセカンドキャリアについて聞く前に、まずは味見から。「一番出ている」という濃厚中華を注文し、その厨房(ちゅうぼう)の作業を見つめた。
ゆで麺機に麺を投入すると、トッピングの準備に入った。チャーシューを切り、バーナーであぶる。麺がゆで上がるとすかさず湯切り。器に投入し、繊細な箸さばきでスープと麺を絡ませていく。最後にチャーシュー、彩り鮮やかな紫ネギなどのトッピングを盛って完成。笑顔とともにラーメンが手元に届いた。