熱海の土石流災害から2年、生かされない教訓 悪徳業者と責任放棄の行政が生み出した惨劇

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災害後の県の調査で残土に廃コンクリートや廃プラスチック、木くずなどの産廃が相当混じり、土壌環境基準を大幅に上回る鉛と基準超えのフッ素も検出された。

元国土交通省の技官だった難波喬司副知事(当時)は「フッ素が高いのは固化材のせい」と説明したが、固化材のセメントには環境基準を超えるほどのフッ素は存在しない。もともと産廃混じりの汚染土だったということになる。

環境政策論が専門の畑明郎・元大阪市立大学教授は「埋め立て業者は『改良土』と呼んでいますが、その多くは産業廃棄物の建設汚泥が原料です。伊豆山の残土も建設汚泥の可能性が高い。県は廃棄物処理法によって産業廃棄物と認定すべきでした」と話す。

もし、産業廃棄物と認定したら、即座に措置命令(撤去命令)を出すことができる。産廃の不法投棄には、最高で3億円の罰金を科すことができる。

その強力な法律を使わず、なぜ、市は規制力の乏しい県の土採取規制条例に頼ったのだろうか。

産廃の建設汚泥の疑いも

県が「搬入されたのは建設発生土」と言い張るのは、産業廃棄物(建設汚泥)と疑われるのを嫌っているからだ。建設工事から出る建設発生土は廃棄物でなく、廃棄物処理法の対象外だ。

国交省によると、建設発生土は年間約2億9000万立方メートルの発生量のうち約1億6000万立方メートルが工事現場に戻し、埋め戻し材に使うなど有効利用されているが、約6000万立方メートルの内陸埋立地の実態は不明としている。

三重県紀北町名倉の残土捨場。太陽光パネルを設置する準備が進むが、谷を埋めたあと会社は倒産した。急斜面で災害の発生が懸念される。こんなところが全国各地にある(筆者撮影)

危険な残土の山を築いたり、農地に無断で盛土したりする事例が相次ぎ、多くの自治体が、残土の搬入と埋め立てを規制する条例を制定した。しかし、条例は、地方自治法上、2年以下の懲役と100万円以下の罰金しか下せず、抑止効果に欠ける。

静岡県の土採取条例は20万円以下の罰金だった(2022年に県が制定した盛土規制条例は2年以下の懲役、100万円以下の罰金とした)。これでは悪がはびこる。熱海市もその1つだった。

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