熱海の土石流災害から2年、生かされない教訓 悪徳業者と責任放棄の行政が生み出した惨劇

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熱海市の盛土が造成されたのは2009年にさかのぼる。この業者は、熱海市内の建築物を解体し、3000立方メートルの建設廃棄物を伊豆山の山林に持ち込み、さらに盛土現場に運んだ。

県は、口頭と文書で指導を続けたが、効き目はなく、業者は廃棄物を埋めてしまった。この業者の投棄に、県が措置命令を発令することはなかった。その理由について、埋め立て現場の近くに産廃が持ち込まれているのを見つけた県職員は復命書にこう記している。

「運転手は『解体ごみの仮置き場と聞いている』。埋め立てたら警察に通報することもあるが、警察は摘発しても除去までしないので、まずは根気よく指導していく方がいいのではないか」。熱海市が土採取条例で口頭注意と文書での指導にとどめたのと同じことを、県もやっていたのだ。

仮に産廃混じりの残土を産廃と県が認定すると、措置命令をかけて業者が従わなくても、排出元の工事現場の業者に回収を命令することが可能だ。公開された県の文書からは、こうした検討を行った形跡はまったくない。

森林法と砂防法の適用も県は嫌った

森林法の適用でも、責任を放棄しようという行政の実態が浮かび上がる。開発業者は、1ヘクタール以下の開発計画だと市に伐採届けを出し、1ヘクタールを超えると県に林地開発許可申請を行う必要がある。

2007年3月、この業者が土採取条例に基づき市に9446平方メートルの届出を行った翌月のこと。「1ヘクタールを超える開発が無許可で進められている」との通報が市にあり、市から連絡を受けた県の職員が現地を見た。通報通りで、県は、森林復旧を文書で指導、植栽させることで決着した。

見るからに危険そうな熱海市の盛土現場。持ち込まれた改良土は黒褐色だ(熱海市の公開文書、2009年11月撮影)

ところが、2009年11月、再び同じことが起きた。市は、同じ場所で1ヘクタールを超える改変が行われている疑いがあるとし、11月4日、県の東部農林事務所と協議した。

県職員は「もし1ヘクタールを超えているようであれば、復旧を指導していくことになるが、現地は一度指導を受けた場所であり、再犯の場合もまた同じようなやり方(植栽のこと)で許していいのか考える必要がある」と記した。

業者に強い方針で臨むかどうか、考えていることがわかる。

ところが、2日後の協議の記録では、「1ヘクタールを超える開発との確認がされていないので森林法の適用はできない。従って条例を根拠に指導をしていきたいとして検討中である」と姿勢が急変した。

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