熱海の土石流災害から2年、生かされない教訓 悪徳業者と責任放棄の行政が生み出した惨劇
6月29日、静岡県の熱海港七半岸壁に接岸した運搬船に、岸壁のフレコンバック(土嚢袋)が積み込まれている。約500立方メートル分を積むと、運搬船は千葉県市川市の土壌再利用センターに向かった。
フレコンバッグの中身は、昨年秋、土石流の起点となった伊豆山の源頭部で見つかった2万8000立方メートルの取り残しの残土だ。環境基準の数倍の鉛と基準を超えるフッ素が検出された、いわゆる「汚染土」である。
筆者は、熱海の災害現場と残土の処理現場を何度か訪れている。フレコンバッグに詰める残土の色は黒褐色だった。伊豆山に埋められた残土を撮影した熱海市の公開写真を見ると、これも黒褐色である。
伊豆山に埋めた黒い土の「秘密」
静岡県の担当者は「建設発生土の地盤を固める時、固さが足りないので、現地で固化材を混ぜるよう指導したからだ」と答えた。しかし、熱海市の当時の職員がこう記録している。「(持ち込まれた)黒っぽい残土は、搬出元で安定のため、若干セメントを混ぜているかもしれない」(市公開文書)。
業者が熱海市に提出した「改良証明書」には、「熱海、伊豆山購入残土 この残土は、改良を施し一般残土とみなします」とあり、検査会社の名前は黒塗りされている(公開文書)。
「一般残土」という名称はないから、その実態は「改良土」らしい。重金属の溶出量を測った計量証明書は添付されていないから、とても正当な証明書とは思えない。それでも市はこれを受理した。
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