「合理的ではないのに上手くいく」チームの秘訣 強豪サッカーチームの奥深い戦術論とは?
もしパスが通ったら相手を1人抜いたのと同じ状態になり、一気にゴールに迫ることができます。
当初、アーセナルではこの連携がうまくいかず、何度もウイングのところでボールを失っていました。しかし次第にタイミングが合うようになり、今では「パスカットイン」が大きな武器になっています。
「合理的でないのにうまくいく」ための条件は個々の質の高さ
ここまで3つの「合理的ではないことが結果的にうまくいく」例を見てきましたが、ひとつ注意が必要なのはこれらすべてにおいて選手個人の特別な質を前提としているということです。
(1)ロングボールから打開→フィジカルが強いセンターフォワードが必要
(2)サイドバックが囲まれて突破→技術に優れたサイドバックが必要
(3)パスカットイン→サイドバックとウイングの質が必要
もちろん「合理的なサッカー」をするうえでも一定の質は必要です。ピッチ上に一人でも原則を実行できない選手がいると理論が崩れてしまうからです。原則を徹底できずに「中途半端な合理的なサッカー」になるのが一番ダメなパターン。
「合理的でないサッカー」には緻密さがない分、そういう脆弱性(壊れやすさ)がありません。
ただし、「合理的でないサッカー」に求められる質は非常に高く、そのリーグレベルにおける特別な存在でなければ成立しません。
運頼みの部分を許容して、特別な個人をそろえるか。脆弱性を乗り越えて、原則にこだわるか。
より普遍性があり、よりチャンスを増やしてピンチを減らせるスタイルを目指せるのは後者ですが、サッカーを学問的に教育されている選手が少ない日本サッカーだと、選手のキャラクターや自身が任されているチームの環境に合わせて指導者が「追求と妥協のバランス」を取りながら最適解を導き出すべきというのが僕の考えです。
・合理的なサッカーは全員が理解しないと成立しない。
・選手個人の質に頼ると安定感や継続性に欠けるが、そういったサッカーのほうが脳の負荷は低いので指導者は選手や組織を観察・把握して何を合理化し何を選手任せにするべきか熟慮する必要がある。
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