23年上期の映画興収「アニメ頼み」から脱却の兆し 邦画実写の中ヒットが続々生まれ、興行底上げ
もう1つはODS(映画以外の映像コンテンツ)のヒットだ。日本中を熱狂の渦に巻き込んだWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の余韻が人々の心に残るなか、追体験のニーズを汲み取った『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』は、ふだん映画館に行くことがない大谷翔平ファンや、ライトなスポーツファンの女性層の足を動かした。
またSnow Manが主演し、和に特化した舞台を映像化した『滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie』は興収未発表だが、40億円ほどになることが推測される。こうしたODSのヒットも、この上半期の特徴的な好事例と言えるだろう。
牽引作品が生まれない洋画実写
一方、洋画は先に述べた『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の破格の大ヒットがあったほかは、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が約43億円、『ワイルド・スピード ファイヤーブースト』が約40億円、『リトル・マーメイド』は30億円以上が見込まれるが、10億円台にとどまるハリウッド大作が多かった。
今年のアカデミー賞受賞作品『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』も10億円ほど。アカデミー賞受賞作品は一般層にまでなかなか広がらない作品ジャンルであることが多い。日本におけるアカデミー賞効果はこれまでも限定的だったが、今回も同様だ。ただし10億円まで伸ばしたというのは、健闘したと言えるだろう。
また、今年の上半期作品ではないが、昨年10月公開の『RRR』はいまだ上映中。中毒性のある作品性にリピーターが続出するなか、応援上映(ペンライトを持ち込んだり、声援が可能な特別な上映会)や日本語吹替版と、手を替え品を替え異例のロングランを続け、20億円まで伸ばしている。
注目されていたディズニーの名作アニメ実写化『リトル・マーメイド』は、30億円以上が視野に入るが、大高氏は「大ヒットではあるが微妙な数字。観客にインプットされていたディズニーのイメージが変わりつつある」と分析する。
「コロナ前であれば50億円を超えている作品。以前のディズニー名作アニメの実写版はそれくらいのインパクトがあった。一方で、コロナ禍以降の中身の方向転換や(ディズニープラスでの)配信へのシフト強化を含めて、ディズニーブランドは過渡期を迎えている。新作が30億円あたりということは、観客はその変化をどこまで受け入れるのかを見極めている最中なのではないか」(大高氏)
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