23年上期の映画興収「アニメ頼み」から脱却の兆し 邦画実写の中ヒットが続々生まれ、興行底上げ
近年、明るい話題の乏しかった邦画実写だが、今年は違う。そのトピックの1つは連ドラを映画化するドラマ映画の明暗だ。
明となるのが、最終興収45億円超えを狙える大ヒットになっている劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』と、25億円前後まで伸ばした『Dr.コトー診療所』。
『TOKYO MER』は、かつての『海猿』のような、ある意味ベタなエンターテインメント性の高い作品だが、ドキドキワクワク感があり、かつ安心感もある救出劇を幅広い層に向けて描いた点が、観客を引き付けたポイントとなっているだろう。上半期の邦洋あわせて実写No.1の大ヒットとなった。
『Dr.コトー』は、前作のテレビ放送から16年を経た映画化。ドラマ放送時も根強い人気があったが、その久々の新作ということが昔のドラマファンを動かし、ドラマ好きの若い層の関心も引いた。
作品タイプはまったく異なるこの2作に共通するのは、医療系の人間ドラマを軸にした感動ストーリーであること。医療的な側面と、それに重なり合う感動ドラマが、映画の題材としていまの時代の観客の心をくすぐるようだ。
一方、暗となったのは『映画 イチケイのカラス』『映画ネメシス 黄金螺旋の謎』など。どちらもドラマとしてはファンも多くいた。しかし、その法廷劇や謎解きドラマは、映画館に足を運ばせるまでの動機づけにはならなかった。
「映画館に観に行きたい」と思わせられるかがカギ
近年のドラマ映画に関して言えば、以前のようにテレビ視聴者がそのまま映画館に観に行くこともなくなっている。毎年何本ものドラマ映画が公開されるが、興収10億〜20億円が一般的になっている。
そうしたなか、明となった2作は、その企画性や題材、ストーリーによっては、いまの時代でもドラマ映画が一般層を動かすことを示した。
いまさら言うまでもないが、問われているのは、テレビの延長ではなく、映画館に行って観たいと思わせる、時代に即した作品性を打ち出せるか。上半期ヒットからは、テレビ局映画が初心に戻って目指すべき方向性が見えてきたとも言えるだろう。
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