23年上期の映画興収「アニメ頼み」から脱却の兆し 邦画実写の中ヒットが続々生まれ、興行底上げ

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このほかにも邦画ヒットが多く生まれている。

人気原作を目黒蓮の主演で実写化した『わたしの幸せな結婚』が30億円手前、2021年に45億円のヒットとなった『東京リベンジャーズ』の続編2部作の前編『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』、二宮和也が主演を務めた『ラーゲリより愛を込めて』、公開前から話題になった木村拓哉主演の『レジェンド&バタフライ』、庵野秀明監督によるシン・シリーズ最新作『シン・仮面ライダー』がそれぞれ25億円前後。

昨年20億円を超えた邦画実写は7本だったが、今年は上半期だけで同本数に迫る勢いを見せており、年間でどこまで増えるのか期待がかかる。邦画実写が全体の興収を底上げしそうだ。

怪物とWBC記録映画のヒット

そんななかで、さらに注目したいポイントが2つある。20億円超えが視野に入る『怪物』(是枝裕和監督と坂元裕二氏による脚本)と、17億円に迫るWBC記録映画『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』のスマッシュヒットだ。

第76回カンヌ国際映画祭での脚本賞受賞がメディアで大きく取り上げられた『怪物』は、“人気原作を固定ファンのいるキャストで実写映画化する”といった定番化したフォーマットの大規模作品とは異なる。

その内容は、いじめや暴力などの社会問題を題材にしたいまの時代を映すもの。観客を選ぶ作品であるため、興行が難しくもある作品だ。本来の作品性としては10億円前後が見込まれるところ。それを20億円超えまで伸ばそうとしているのは、是枝監督作品の力であり、カンヌ効果がそれを後押ししている。

大高氏は『怪物』のヒットを「上半期のなかで特筆すべきこと」と語る。

「興収上位がアニメとテレビ局映画ばかりのなかで、異例のヒットになっている。ヒットの形が定番化している興行のあり方にくさびを打ち込んだ。『万引き家族』に次いで、こういうヒットが生まれる素地があることを改めて示したのは大きい。誰もが真似できることではないが、大規模な予算のない多くの邦画実写作品のお手本になるのではないか」(大高氏)

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