いろいろな幸せの姿があって、それぞれに上下も感じない。そうすると、自分がどうやって生きるのかを、とても選びづらくなります。
これまでは、自分より上の年代の人を見れば「ああいう進路を目指すべきなんだよね」といった共通認識があったのだと思います。しかし、Z世代は普段目にする幸せのかたちが多様化していて、どれを軸にしたらいいかわかりません。職業も生き方も、「正解」が数限りなくあります。
それに、自分が「こんな生き方がいいな」と思える人がいても、他人はその人を知らないということもあります。昔にはなかった職業や生き方も増えています。
仮にユーチューバーになりたいと思っても、上の世代には見本になる人がいません。相談すれば「何それ」「そんな仕事をしても駄目だ」と言われてしまいます。そうしてどんどん自分の生き方がわからなくなっていきます。
これは、教育が時代に追い付いていないという側面もあるように思います。日本の教育システムの中では、自分のキャリアについて考える時間があまりありません。そうして大学に入り、就職活動の時期に急に人生の選択を迫られます。そこで初めて、「どう生きるかを考えていなかった」と気付きます。
自分がどう生きるか、しっかりと固まった上であれば、多様な人の価値観を見ることで参考になる部分がたくさんあります。しかしそうでなければ、見る姿の数が多ければ多いほど迷いが出てきます。
それでも選ばなければいけないから、何か1つを選びます。社会に出てみて、自分にピッタリ合った仕事であればいいですが、どう生きるかを考えずに決めた進路が自分に合う確率は高いとは言えないでしょう。そうして、「この人生でいいのか?」「ほかに楽しい道があるんじゃないか?」「挑戦してみてもいいんじゃないか?」と考えながら暮らしています。
「自分らしさ」や「個性」大事に
Z世代は「生き方」に迷いを抱える一方で、終身雇用は崩壊し、同じ企業の中でずっと働き続けるのは無理だとわかっています。転職は当たり前で、フリーランスになったり、起業したりする人も増えています。僕の同年代の知人から、「ずっと同じ会社で勤めようと考えている」と聞いたことなんてほとんどありません。
それぞれの生き方がバラバラの中で、ずっと同じ場所にいることもできません。加えて、時代とともに人の寿命は長くなっています。これまで80歳までの人生設計をすればよかったのが、100歳まで考えなければいけません。
そうした背景から、「個人としての力を持たなければ、これから先は生きていけない」と考えるようになります。そこまで明確に意識を持っていなくても、「自分らしさ」や「個性」を大事にし、多様性を好む傾向があります。
以前、「日本人は同調圧力が強いといわれるけれど、Z世代は自分らしさを大事にしたがる。そこに矛盾を感じることはありますか?」と聞かれたことがあります。
僕なりの答えとしては、同調圧力と個性を大事にする意識が混在しているのが、現在の日本だと考えています。
上の世代が昔ながらの同調圧力を持っていて、その子どもが個性を大事にするZ世代だという構図です。職業を選ぶときに、大人たちは「大企業に入りなさい」と言い、子どもたちは「起業したい」と考えます。だからわかり合えない部分が出てきます。
これはどちらがいい、悪いという問題ではないと思います。単純な意識の違いであり、人によって考え方も違います。ただ、傾向として、Z世代と上の世代にはこうした違いがあるということは踏まえておくべきです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら