「男がつらい社会」、日本は本当にこれでいいのか 過去最低“ジェンダーギャップ"の背景にあるもの

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ところがツイッターを見ると、まだまだ男性主導の社会が「自然」であり、「そのほうがいいのかな」と現状維持を受け入れるような男性の声が散見されます。本当に男性たちはそれでいいのでしょうか。「男女格差は、男性たちの生活や人生にも大きな影響を及ぼしている」という視点が欠けているように見えてしまうのです。

男女格差があるから「男性もつらい」

男女格差の話題になると、男性は「女性というだけで優遇されるのはおかしい」などと反発しがちなところがありますが、決して単純な損得の話ではありません。

現在の政治・経済は、本人も周囲の人々も、「男性がそれに打ち込み、家庭、趣味、人間関係などを犠牲にすることが当然」のように見なされがちです。過度な労働時間やプレッシャー、生産性の低い業務や古い習慣、内外のクレームやハラスメントなどを受け入れざるを得ず、プライベートの時間がなかなか取れない職場でも家庭でも孤立しやすく、「立場を失ったとき、自分には何も残っていなかった」「気づいたら体を壊してしまっていた」などの悲しいケースも少なくありません

男女格差がある社会は、「女性だけでなく、男性もつらい」「人間らしい生活がしづらい」ものになりやすく、「それらの苦境を改善するためにも女性の能力を生かしていこう」というのが、ごく自然な見方なのです。言わば、「男性のためにも、政治・経済における男性優位を変えていこう」ということ。男性たちは自分の生活や人生、さらには心身の健康や命を大切にするために、自ら男女格差を改善しようと動くほうがいいのではないでしょうか。

だからこそ大切なのは、現在の議員や官僚、経営者や管理職を筆頭に多くの立場が、男女ともに“やりたい仕事”“魅力のあるポスト”であること。まず、過重労働を強いられず、プライベートとの両立がしやすく、実際に産休・育休などの不安が少ないなどのベースが求められます。労働時間と収入、地位とやりがい、犠牲にしなければいけないものが少ないなどのバランスが取れてはじめて、「自分の能力を生かしたい」「思い切って挑戦してみたい」というポジティブな姿勢が生まれるのでしょう。

現在の政治・経済は、「女性たちがそれぞれの現場で男女格差を感じながら戦っている」という状態。または、その大変さを薄々感じているから、「やり損」「失望させられるだけ」と見なして挑戦しづらいところがあります。

次ページ「男女格差を改善しよう」という動きの裏で
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