「男がつらい社会」、日本は本当にこれでいいのか 過去最低“ジェンダーギャップ"の背景にあるもの

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一方で「教育」の指数は99.7%、「医療」の指数は97.3%で、「男女平等に近い」と評価されています。つまり、「教育」と「医療」で男女ともにポテンシャルを発揮しやすい国であるにもかかわらず、「政治」と「経済」で女性のそれを生かし切れていないという見方をされているのでしょう。

ネット上には、「世界からどんどん遅れていく日本。先進国とは言えないレベル」「原因は政治だろう。日頃から政治に無関心な国民にも責任がある」などと調査結果を重く受け止める声と、「能力のない女性を引き上げたら、それこそ男女格差が生まれる」「こういう調査の影響でポストを与えるのはよくない」などの否定的な声に二分されています。

どちらの声にも一理あるものの、ともに1つ抜け落ちている重要な視点がありました。それは単に女性の政治・経済への参画だけでなく、男性側の生活や人生に関わることなのです。。

男女格差を能力主義に置き換える弊害

近年、強制的に政治・経済などの分野で女性の比率を上げるクオータ制の是非が議論され、すでに実施している国が過半数とも言われています。ただ、このような議論のとき必ずあがるのが、前述したような「性別ではなく能力で選ばれるべき」「無理やり女性の割合を上げて政治・経済がよくなるとは思えない」という反発の声。今回のジェンダーギャップ指数でも、このような能力主義を掲げるような声が目立っていました。

問題はクオータ制の是非ではなく、“能力”の前提。このような能力主義の声は正論に見えるものの、ベースとなる論点が抜け落ちています。そもそも「現職の男性たちは本当に能力が高くて選ばれたのか」「能力の高い女性たちが埋もれずたどり着ける環境なのか」。それらの前提に疑問が残る以上、能力主義を掲げて男女格差の議論を阻むのは無理があるのです。

これまで日本は長い歴史の中、男性主導で現在の社会を作ってきたことは間違いないでしょう。その結果が「政治」と「経済」における現在の男女格差であり、「それが本当に正しいことだったのか」「男女の能力差はそんなにあったのか」などの検証はされていません。過去は国民性や文化的な背景などからそれが自然だったかもしれませんが、性別だけでなく個人の尊重が叫ばれる令和の今、その格差は時代錯誤なものにも見えます。

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