「ロリータ服」をコスプレと思う人に欠けた視点 じつは日本発の奥深いファッションスタイル

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顔だって、あごがとがりすぎたり頬がこけたりしないよう、過度なダイエットはしません。特にアラフォーともなると、やせすぎは体が骨ばった印象になったり、皮膚にシワが寄ったり、生々しさへのパスポートになりかねません。だから見る人に安心感を与えるような、ほどよいマシュマロボディが目標です。

それでいえば、歯を見せて笑わないのもお約束。〝喜怒哀楽〞をストレートに表すのは生身の人間っぽいので、少し口角を上げて微笑んでみせるくらいで、できるだけ表情が出る動作は抑えます。

唐突ですが、顔のパーツのなかでもっとも表情が出るのはどこだと思いますか? じつは「眉」。だからヘアスタイルは、眉を隠せるくらいの重めぱっつん前髪に、ストレートの姫カットが基本なのです。

ロリータ服を着て「棒立ち」する理由

そして、ポージング。女性ファッション誌では定番の〝髪を風になびかせて、さっそうと街やオフィスを闊歩する〞ワーキングウーマンスタイルも、ロリータの世界には存在しません。だって、ロリータは働かないから……(笑)。メイドさんがすべてやってくれるので、労働を知らぬロリータは、ただそこに静かにたたずむのみです。棒立ちです。

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でも、そこにはちゃんと「ロリータ服のよさを最大限に魅せる」という狙いも共存しています。ロリータ服は襟元から裾先まで、360度どこから見ても美しく作られた完璧な存在ですから、しゃがみ込んだり体をひねったりしてしまえば、繊細なデザインや凝ったディテールが隠れてしまいます。

その魅力をじゅうぶんに映し出すことができない……そんなの、ロリータにとっては悲劇でしかありません。だから、棒立ち。ダイナミックなポージングは必要ないのです。

ロリータ服がいちばんの主役で、それを着るモデル(ドール)は、その魅力を伝えられるよう最大の努力で応える……ロリータモデルを始めて試行錯誤した結果、この独特のスタイルに行き着きました。

イメージは、絵に描かれた人形(2次元)と生身の人間(3次元)の間に位置する、限りなく人形に近い人間=2・5次元の存在。もちろん私個人の解釈ではありますが、今のロリータモデル界においてこのポージングは、ごく一般的なものとして浸透しているように思います。

青木 美沙子 ロリータモデル・正看護師
あおき みさこ / Misako Aoki

1983年生まれ。高校時代に読者モデルとしてデビューし、雑誌『KERA』などで活躍。ロリータファッションのカリスマとなる。正看護師として大学病院に勤務していた2009年、外務省より「ポップカルチャー発信史(カワイイ大使)」に任命され、国内外に日本の「KAWAII文化」を広める活動を行う。この任命を機に大学病院を退職し、以降、訪問看護に従事する。2013年には「日本ロリータ協会」を設立し、同協会の初代理事長に就任。現在はロリータモデル、インフルエンサーとしてその魅力を伝えつつ、訪問看護師の仕事を両立させている。

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