「問い」をいったん投げかけておくとひとりでに「熟成」をして、思いもよらぬ角度から高精度の答えを提示してくれます。
もちろん、問いを投げかける前にいったん考え抜く作業は必要です。しかし「何もしない状態」は、それ以上に大事なのです。
「発酵」こそクリエイティブの源
名著『思考の整理学』で著者の外山滋比古氏は、この「何もしない状態」を「発酵」という言葉で形容しています。
手に入れた情報は、すぐに利用するのではなく、しばらく寝かせておく、つまり発酵させることで新たな価値を生み出せると説いています。
これと類似のことは過去の賢者たちも唱えてきました。よいアイデアを生み出すためには「一生懸命考える」という過程は必要ですが、脳に負荷をかけて必死に考えたあとはしばらく放っておく。
そうすることで、脳内である種の化学反応が起こり、新たなアイデアが生まれるわけです。
実際、私もこの脳の性質を活用して、多くのアイデアを創出してきました。この「熟成」「発酵」のメカニズムを教育心理学の用語で「レミニセンス現象」と言います。たとえば次のような現象を指します。
●それまで体得できなかったスポーツなどの技が、トレーニングの末、急にマスターできるようになる。
●楽器演奏の際、いつもつまずいていた箇所が、レッスンを続けるうち、ある日を境にうまく演奏できるようになる。
つまり「学習したことが、時間を経ることで(=熟成、発酵)、その内容が高度化する」という現象が起こりうるのです。
これは寝ている間に脳内で記憶が整理され、その後の学習を促進させた結果です。ですからアイデアが欲しいときも、時間を置くことが重要なのです。
時間をかけることで脳が整理され、既存の記憶が有機的に組み合わさり、クリエイティブなひらめきが舞い降りてくれます。
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