移住人気先の山梨県、人口急減を加速させる内情 6月に全国初の「人口減少危機突破宣言」打ち出し

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山梨県北杜市から眺める八ヶ岳(筆者撮影)

武田信玄を輩出した甲斐の国・山梨県が深刻な事態に見舞われている。人口減少が止まらず、6月に全国で初の「人口減少危機突破宣言」を打ち出した。今年4月に人口80万人を割り込み、2000年から10%超も縮小した。出生数の減少も深刻で、年間わずか4884人にとどまっている。人気移住希望地と喧伝されてきたのはいったいなんだったのか。その内情に迫った。

山梨県は毎月「山梨県常住人口調査結果」を発表している。最新の5月1日現在において、推計人口は79万6893人。前年同月と比べると4942人の減少となっている。ピーク時の2000年9月には89万5646人だった。

県内には27市町村が存在する。県庁所在地の甲府市をはじめ市が13、そして8つの町、6つの村という構成だ。このうち昨年5月と比べて、この1年間で人口が増えたのは全体の4分の1の7市町村。人数が多い順に昭和町208人、南アルプス市86人、中央市60人などとなっている。

残りの20市町村は減少で、甲府市の546人を筆頭に笛吹市544人、大月市464人、甲州市と富士吉田市が459人など。もっとも多い県庁所在地の甲府市でさえ、総人口は18万7962人と20万人に満たない。東京で言えば三鷹市(19万0424人)とほぼ同じ水準である。

山梨県 武田信玄
山梨県は武田信玄ゆかりの地でもある(筆者撮影)

甲府市の衰退ぶりを物語るのが、老舗百貨店の閉店・再出店だ。今年2月、老舗百貨店「岡島百貨店」が85年の歴史に幕を下ろし、3月に規模を7分の1に縮小して近隣の商業ビルに移転して再スタートした。

地下1階に食料品売り場、1階に雑貨と化粧品、2階に服飾や家具、催事場という3フロアでの営業スタイルに変わった。ダウンサイジングで収益力を高めて生き残りを図ろうというわけだ。

甲府駅周辺にはかつて岡島百貨店と山交百貨店という2つの地元資本の百貨店があり競っていたが、山交百貨店は2019年9月に閉店に追い込まれた。そして岡島百貨店も規模を縮小しての再スタート。これが縮小化する地方の現状だ。

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