移住人気先の山梨県、人口急減を加速させる内情 6月に全国初の「人口減少危機突破宣言」打ち出し

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しかし、詳細を検証すると残念な事実が浮かび上がってきた。山梨県の2022年の転入超過数は704人で2年連続で転入が転出を上回った。ただし、あくまでこの数字は外国人も含めた総数である。

日本人に限ると、2022年は12人の転出超過となっている。男性は247人の転入超過だが、女性が259人の転出超過なのだ。一方、外国人は716人(男性378人 女性338人)の転入超過となっている。つまり、山梨県の転入超過の主因は外国人の転入なのだ。

世代別の転出入状況(日本人)を調べると、若者の人口流出がクッキリと見てとれる。20歳から24歳が1615人(男性661人、女性954人)、25歳から29歳が173人(男性106人、女性67人)と、20代全体では1788人の転出超過だ。このうち女性が1000人超を占めている。年間の転入超過数(総数)をはるかに上回る若い女性の流出は、出生数減少にかかわってくるだけに深刻だ。

ただ、子育て世代に該当する30代は327人、0~14歳の子ども世代も276人の転入超過となっている。その実態が転勤なのかUターンをはじめとする移住によるものなのかは確認していく必要がありそうだ。

移住をめぐっても自治体で濃淡

移住人気先として有名な北杜市は日本人の転入超過が109人。20代の若者が150人の転出超過の一方で、子ども世代は87人、30代は44人、40代は59人の転入超過となっている。世代別では60代が83人でもっとも多い。リタイアしたシニア組の移住が多いのだろうか。

移住支援をはじめとするシティプロモーションに力を入れている南アルプス市は転入超過が261人と北杜市の2.4倍ある。南アルプスのふもとに位置し、自然環境に恵まれた自治体だ。20代は149人の転出超過だが、子ども世代は154人、30代は167人、40代は63人の転入超過だ。子育て世代の移住効果があらわれているように思える結果だ。来年度は大企業の進出も決まっており、大規模な雇用創出が見込まれることから、今後も移住者増加が予想される。

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