移住人気先の山梨県、人口急減を加速させる内情 6月に全国初の「人口減少危機突破宣言」打ち出し

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一方、東京からの中央線特別快速が停まる大月市は、138人の転出超過だ。子ども世代は13人の転入超過だが、20代は141人、30代は6人の転出超過となっている。40代は12人、60代は6人の転入超過だが、全体的に移住効果はほとんど見えてこない。

移住先人気が高い山梨だが、自治体によって濃淡があるということだ。総じて言えるのは、年間5000人近い県人口減少のなかで、30代と子ども世代を合計した転入超過数は600人程度にとどまっている。逆に若い女性の流出が1000人超という厳しい実態。この現状を改善していくことが緊急課題と言えるだろう。

推計では2045年に60万人割れ

国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(2018年公表)では、山梨県の人口は2025年76.3万人、2030年72.4万人、2035年68.4万人、2040年64.2万人と減少し続け、22年後の2045年には59.9万人と60万人を割り込むとなっている。今後、減少ペースが加速し、これからの20年あまりで20万人も減るというのだから、たしかに危機的な状況である。

山梨県に限ったことではないが、人口減を食い止めるためには出生数を増やすことが大前提となる。そのためには若い女性の都会への流出を抑え、20代後半から30代の若い世代の移住者を増やすことが不可欠だ。とはいえ、これは他の県にとっても同じこと。移住者をめぐって限られたパイの争奪戦がますます激しくなる。しかも、それは同じ県内の自治体間でも起きることである。

そんなサバイバル競争に打ち勝つには、宣言だけではなく、より実効的で魅力的な政策を打ち出せるかどうか。山梨県全体で言えば、将来的なリニア新幹線開通を見据えた甲州の知恵と実行力が問われることになる。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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