地方移住で支援金「大盤振る舞い」のお寒い実態 都心回帰が鮮明、3年間の移住支援は結果伴わず

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東京からの地方移住の流れは一時的だった(写真:CORA/PIXTA)

東京一極集中の是正、地方移住の流れは進むのか。昨年暮れ、政府は東京圏からの地方移住者を2027年度に年間1万人に増やす目標を掲げた。東京圏からの移住世帯について、世帯分100万円に加え、18歳未満の子ども1人当たりの支援金も100万円に引き上げる方針(現行は30万円)と報じられ、「大盤振る舞い」と話題になったが、現実はどうなっているのか。実態を探ってみた。

政府が移住政策を強化する背景には、東京一極集中の是正が一向に進まず、地方活性化が掛け声倒れになっているという現実がある。コロナ禍で、東京都の転出超過が一時話題になり、地方移住が進んでいるかのような報道もあった。しかし、詳細を分析すると、転出者の多くは外国人だったり、日本人の転出先も東京近郊にとどまっているケースが多かった。

公表されている直近の人口移動報告データをみると、東京都は昨年、3万5746人の転入超過(日本人対象。2022年1-11月の累計)となっている。コロナ前2019年の年間8万6575人と比較するとまだ半分以下の水準だが、2021年の年間1万0815人と比べると3倍以上だ。東京への人口流入の動きが完全に復活してきている。

東京都心の人口増が顕著

その一極集中だが、データを詳しく見ると都心部の人口増加が顕著であることがわかる。2019年と比べて2022年に日本人人口が増加したのは、23区のうち半分の12区。増加数が最も多かったのは江東区の8595人だ(増加率は1.75%)。

増加率のトップは中央区で3.27%(5216人増加)、次いで千代田区が2.99%(1874人増加)、3位の台東区が2.67%(4976人増加)となっている。2%以上の増加はこの3区のみだ。

中央区は、1月1日現在の人口(住民基本台帳)が17万4074人(うち日本人は16万4750人)となり、「70年ぶりに過去最多を更新した」と話題になった。銀座や日本橋といった繁華街を抱える中央区の人口は、バブル期に家賃をはじめ住宅コストが高騰し、バブル崩壊後の1997年には過去最少の約7万2000人まで落ち込んでいた。その後の四半世紀で2.4倍も増えたことになる。臨海部の再開発によるタワマン増加や職住近接人気で、コロナ禍でも人口は増え続けた。

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