地方移住で支援金「大盤振る舞い」のお寒い実態 都心回帰が鮮明、3年間の移住支援は結果伴わず

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さらに特徴的なのは、年齢3区分人口の割合である。最新の1月のデータ(区の発表)を見ると、年少人口(0-14歳)は2万3759人で13.6%。生産年齢人口(15-64歳)は12万4796人で71.7%、老年人口(65歳以上)は2万5519人で14.7%と、全国平均(年少11.6%、生産59.4%、老年29.0%/2022年12月)と比べて、極めて良好なバランスとなっているのだ。

このため、出生数も毎年2000人以上と高水準が続き、人口減に苦しむ地方の自治体からすれば羨むような状況となっている。東京一極集中の光を象徴するデータである。

移住支援の実績は3年間で3067人

さて、移住の話に戻ろう。岸田政権は5カ年計画の「デジタル田園都市国家構想総合戦略」の一環として移住支援策を強化しようとしているのだが、はたしてどれだけの効果が見込めるのか。実は政府の移住支援金政策は2019年度から実施されていて、2021年度までの3年間の実績が公表されている。

3年間での移住支援事業総計は1545件、移住者数の総計は3067人だった。初年度はわずか71件、123人だったのが、徐々に増えていき最多の2021年度は、1184件、2381人となった。

一方、政府の地方創生関連に注ぎ込んだ当初予算は、令和3年度だけで1兆2356億円に達する。そのうち移住支援金などにあてられる地方創生推進交付金は1000億円。それだけの予算を組みながら地方自治体からの交付申請は思ったほど伸びず、移住者数は3年間で3000人強程度の実績しか出せていない。

政府は、2027年度には支援により年間1万人の移住を実現する目標を掲げている(2021年度実績の4倍超)。だが、東京圏への転入超過は8万0441人(2021年度実績)に達しており、1万人程度の移住では一極集中是正には程遠い。

移住支援政策のあまりにも寒々しい状況を紹介してきたが、政策自体の方向性は決して間違っていない。問題は、その内容だ。今回の移住支援金増額報道では、「子ども3人の一家5人家族なら最大400万円」と金額の大きさを強調するものがあったが、移住問題のネックは目先の金銭だけではない。

仕事や子育て環境、教育、医療、気象条件、近隣との人間関係など、移住環境をトータルで考慮しなければ若者や子育て世代の定着は困難だ。政府も地方自治体も、金銭的な支援で関心を惹くのではなく、移住環境の充実をいかに図り、実態に即した情報を可視化できるかがポイントだろう。

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