与那国島「予期せぬミサイル部隊配備」の大問題 辺境から南西防衛と台湾有事を考える(下)
与那国町が陸上自衛隊駐屯で期待していた地域振興のうち、財源増大はかなえられたが、人口の流出に歯止めがかからなかったことも、新たにミサイル部隊が配備されることに対する地元住民の批判と無関係ではない。ふたをあけてみれば、自衛隊関係者が増える代わりに地元住民が減っていく一方だという。
与那国島には高校がないので、子供の進学のタイミングで家族ごと島外に引っ越していく。そのため、自衛隊員の子供の転入で小学校の複式学級が解消されても、地元の子供が上の兄弟の進学に伴い転出していき、また複式学級に戻ってしまうという。仕事がないので、島外の高校や大学を卒業した与那国出身者が地元に帰ってくることも難しい。
また、入院施設がないので、入院しての治療が必要な場合には石垣島か沖縄本島まで行かないといけない。与那国町は高齢者の死亡率が低いのだが、それは島外にいる子供が体調を崩した高齢の両親を引き取り、そのまま病院で最期を看取るからだという。
与那国町に交付されている防衛省の民生安定施設整備事業補助金では、高校の通信教育の予算を組んだり、介護施設を建てたりすることはできない。いわゆる「9条交付金」と呼ばれる教育・福祉財源への使用が可能な補助金は、ある程度の基地の規模と構成員数、基地周辺住民の人口がないと交付されない(奄美大島の陸上自衛隊駐屯地も「9条交付金」の適用外)。よって、陸上自衛隊の部隊が増えて補助金が増えても、人口流出への効果的な対策を打つことができないのだ。
観光人気はあるが…
2003年と2006年に放送されたテレビドラマ『Dr.コトー診療所』のロケ地となった与那国島は、ダイビングをする者に人気の観光地で、コロナ禍前までは年間約4万人の観光客が訪れていた。特に、11月から3月にかけての冬場は、サメの仲間のハンマーヘッドシャークの大群が見られることから多くのダイバーが訪れる。
2022年12月に劇場版『Dr.コトー診療所』が公開されると、与那国町観光協会には観光客からの問い合わせが相次いだが、地元の観光業が数年ぶりの活況にわいたかといえば、むしろ部屋が空いているのに「満室」を掲げる宿が出るような状況となった。
沖縄タイムスによると、247人が宿泊可能な島最大のホテル「アイランドホテル与那国」がコロナ禍で休館し続けているためだ。他のホテルでは30人規模の団体客を受け入れられないため、日帰りツアーにしてもらうしかない。
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