与那国島「予期せぬミサイル部隊配備」の大問題 辺境から南西防衛と台湾有事を考える(下)
近年、中国が南西諸島、台湾、フィリピンが連なる「第1列島線」を台湾に侵攻する際にアメリカ軍の接近を阻止する防衛線として重視していることから、自衛隊は第1列島線西側で中国軍の行動を抑え、東側の太平洋に展開しにくくする役割をアメリカから期待されるようになっている。そうした日本の役割を具体化したのが、2022年12月初旬に閣議決定された安保3文書だ。
ミサイル部隊配備計画に動揺する住民
日本政府が同文書で「反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有」を打ち出し、2026年までに自衛隊の陸海空各ミサイル部隊に長射程ミサイルを導入すると明言したことで、陸上自衛隊ミサイル部隊が配備されている奄美大島、宮古島、石垣島の住民の間には動揺が広がっている。特に、安保3文書の発表からまもなく2023年度中に電子戦部隊、2027年度以降にはミサイル部隊を新たに配備する計画が明かされた、与那国島における動揺は大きかった。
与那国島には2016年から陸上自衛隊沿岸監視隊が駐屯、島内2か所のレーダー施設で外国の艦艇・航空機の活動を監視している。2015年の住民投票で陸上自衛隊の誘致への賛成が多数(賛成632票、反対445票)となった結果だ。
配備当初は、週に2回、船で運ばれる食材や生活物資が頼りの与那国島の生活を忌避する隊員の家族が多く、単身赴任が多いという話も聞いたが、2022年までには隊員約170人とその家族約80人が島民の約15%を占めるようになった。
日本が太平洋戦争に降伏し、台湾が日本の植民地ではなくなった1945年以降も、与那国島は111㎞しか離れていない台湾との密貿易が盛んだったため、1949年には人口がピークとなる約6300人にまで増加した。しかし、1950年の朝鮮戦争勃発を契機に、中国共産党に物資が流れることを恐れた占領米軍が密貿易を取り締まると、島の過疎化が年々進み、2022年時点で約1700人が暮らしている。
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