与那国島「予期せぬミサイル部隊配備」の大問題 辺境から南西防衛と台湾有事を考える(下)

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その通りだ。だからこそ、南西諸島に駐屯する陸上自衛隊ミサイル部隊への長射程ミサイルの配備方針は、地元住民を動揺させているのである。

南西防衛の問題に関するメディア各社の報道は、「国には地元の理解を得るための丁寧な説明が求められる」といった文言で締めくくられることが多いが、いま最も必要なのは丁寧な説明ではない。丁寧な国民保護の措置である。

与那国島には避難できる「地下施設」がない

与那国町議会の議員団は2023年2月、東京で松野博一官房長官や浜田靖一防衛相と面会し、「台湾有事が発生すれば町民の生命と安全が脅かされる」と、島への一刻も早い避難シェルターの設置を求めた。

ウクライナは2022年2月にロシアによる侵攻を受ける前から、地下鉄の構内などを避難シェルターとして使えるよう整備していた。台湾も1970年代から地下鉄に加え、学校などの公共施設や商業施設、地上6階以上のマンションやビルなどの地下に避難シェルターの設置を義務化し、全土に10万カ所以上のシェルターを整備している。

他方、日本では、国民保護法にもとづき指定された、全国の「頑丈な建物や地下」の避難施設9万4000カ所(2021年4月時点)のうち、地下施設は1%にすぎない。沖縄県内の地下施設はたった6カ所で、与那国町はゼロだ。

2022年12月に与那国町で行われた、弾道ミサイルを想定した初の住民避難訓練では、参加住民は近隣の建物に逃げ込み、爆風を避けるため窓から離れた廊下や倉庫にしゃがみこんだ。ウクライナでは、ロシアのミサイルが直撃したマンションの建物全体がひしゃげ、中央部分はがれきと化した。国の推奨する訓練に実効性があるとはとても思えない。

山本 章子 琉球大学准教授

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やまもと あきこ / Akiko Yamamoto

琉球大学人文社会学部国際法政学科准教授。1979年北海道生まれ。一橋大学法学部卒。編集者を経て、2015年一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。沖縄国際大学講師、琉球大学専任講師などを経て2020年4月から現職。専攻・国際政治史。著書に『日米地位協定 在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書)、『米国と日米安保条約改定――沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年、日本防衛学会猪木正道賞奨励賞受賞)など。

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