与那国島「予期せぬミサイル部隊配備」の大問題 辺境から南西防衛と台湾有事を考える(下)
宿の数自体は多く、アイランドホテル以外で合わせて391人の宿泊が可能だが、ネット環境が整っている施設が限られ、じゃらんや楽天トラベルから予約できる宿が少ないので、観光客は与那国町観光協会のHPで宿を探して、一軒ずつ電話で予約状況を確認しなければいけない。
加えて、コロナ禍でスタッフが辞めた宿の経営者は高齢者ばかりで、素泊まりに限定した受け入れが精一杯となっている。与那国町にはコンビニエンスストアがなく、地元の商店は普段から弁当は朝と昼で売り切れ、総菜は夕方にはなくなる。観光客は居酒屋も予約しないと入れない状況だという。
このような状況で、東京のコールセンター「アクトプロ」が2022年、与那国島の休業中のホテルに進出するのと合わせて、島内の空き家を移住者に提供する不動産業や、洞窟探検などの観光ツアーの企画を始めた。沖縄タイムスによれば、コールセンターの従業員や移住者が稼ぎながら生活し、遊べる環境を提供することで島内の人口を増やし、島の活性化に結びつけたい意向だという。
なるほど、うまくいけば、新たな移住者が与那国の観光業を支えるようになるかもしれない。しかし問題は、自衛隊の駐屯と同様に、移住者が増えても流出する地元住民の穴埋めにすぎないということだ。
「丁寧な説明」ではなく国民保護を急げ
ロシアの軍事・安全保障の専門家である小泉悠氏は、『ウクライナ戦争』(ちくま新書、2022年)で次のように指摘している。
これは、我が国が核兵器を持つ侵略国(台湾有事の場合で言えば中国)の核恫喝を受けることを意味しているから、日本がこうした立場に立つべきかは国民的な議論を必要としよう。だが、現状ではそうした議論自体が行われていないわけであり、このままでは将来の軍事的危機事態に明確な国民的合意なしでずるずると巻き込まれていくことになるのではないか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら