"テスラ越え"目指すTuringの1台目開発の舞台裏 「自分たちならできる」実感はなぜ大事なのか

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青木渡邉が手掛けている技術がまさにそうですが、ソフトウエアで操る領域を増やせば、車はより楽しくて使いやすいものになります。なので、自動車業界にはもっとソフトウエア人材が入ってきていい。

もし車が利便性だけを提供するプロダクトだったら、電車やバスなど代わりの交通手段がある地域の人には必要ないはずです。

それでも車に乗りたいと思ってもらうには、「車って楽しいな」と思える体験を提供する必要があります。

カメラや時計も利便性だけを考えればスマホで代替できますが、それでもあえて一眼レフや高級時計を買う人たちがいるのは、使うのが楽しいからですよね。

これからは自動車も「使って楽しいプロダクト」を目指すべきだし、そのためにはソフトウエアの技術や知見が必要なんです。

「いいヤツの集団」を意識的に構築

ーー自動運転システムの開発だけでなく、自動車そのものを自社でいちから造るという前例のない挑戦をするにあたり、チームづくりにおいてこだわっている点はありますか?

青木チームづくりの前提となる採用にはかなり力を入れています。30年を見据えた中長期的なチームづくりを考えると、最初に集まる10人や30人が会社のカルチャーを決める土台になりますから。

なので、エンジニア含め全候補者をCEOの山本と私で必ず面談しています。二人のうち一人が少しでも迷ったら採用を見送るくらい妥協のない採用をしています。

特に大事にしているのが“いいヤツ”を採用すること。いくらエンジニアとして優秀でも、周囲にマウントを取ったり、攻撃的な物言いで仲間を傷つけるような人が入ったら、チームがギスギスしてしまいます。

それでは一人一人がのびのびと力を発揮できないし、メンバーがお互いに教え合い、学び合いながら、高め合っていくこともできません。

中長期的に組織として成長していくには、“いいヤツ”が集まった雰囲気の良いチームで気持ちよく働いてもらうのが一番。現在は30名弱の正社員が在籍していますが、私から見ても優しくて気遣いのできるメンバーばかりです。

ーー完成車メーカーを目指すにはハードウエアとソフトウエアの開発を同時に進めていく必要がありますが、開発組織はどのような体制で動いているのですか。

青木自動運転において「脳」の役割を果たすAI開発を担う「brainチーム」と、「身体」にあたる車両の開発を手がける「vehicleチーム」に分かれています。

Turingの場合、難しいのは開発体制で参考にできる事例がほとんどないことです。近年成功したスタートアップのほとんどはソフトウエア企業で、自動運転車をいちから造るために立ち上げたスタートアップは存在しない。

経済産業省が主導するスタートアップ育成支援プログラム「J-Startup」の支援企業に選出されたTuring。そこでも「日本でほぼ唯一の完成車メーカーを目指すスタートアップとなるだろう」と推薦コメントが寄せられている。

次ページハード開発とソフト開発がシナジーをいかに生み出すか
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