"テスラ越え"目指すTuringの1台目開発の舞台裏 「自分たちならできる」実感はなぜ大事なのか
ーー1台目の開発において、困難だった点やチャレンジングだったことはありますか。
青木:どこまで攻めるかの線引きは難しかったですね。自動運転機能はどのレベルを目指すのか、ベース車両にどこまで改造を加えるのか。
これも大学の研究室ならなんでもやりたいようにやってみればいいのですが、私たちは製品として売ることが目的なので、実用性や安全性、さらには法律や規制なども考慮しなければいけない。
でもルールを守ることだけに気を取られていると、例えば「本当はこんなUIUXが理想だけど規制に収まらなくなるからやめておこう」と保守的な発想になり、新しい挑戦ができなくなってしまいます。
だから自動車の法規に関する本を読み込んだり、官公庁や法律事務所に相談したりして、何がどこまでできるのかを徹底的に調べました。
将来的には走行中にゲームを楽しんだりする機能も
渡邉:例えば実証実験の段階では、カメラを窓ガラスの中間部につけていたんですが、製品として販売する場合は「カメラはフロントガラスの上側20%以内に設置しなければいけない」と法律で定められていることが分かって調整しました。
とはいえ、こうした課題は一つ一つつぶしていけばいいだけなので、メンバーがそれぞれの技術力を発揮してクリアしていきました。
ーー一般的にIVIは「情報」と「娯楽」を提供するシステムと定義されています。可視化は情報の提供にあたりますが、今後は娯楽の提供も充実させていく予定ですか。
渡邉:走行中に音楽を聴いたり、ゲームを楽しんだりする機能はいずれ搭載することになるでしょうね。機能としてはスマホの延長みたいなものなので、Webやアプリ開発を手掛けてきたエンジニアなら、その経験をIVI開発で生かせると思います。
その際に私がこだわりたいのは、デジタルネーティブ世代が違和感なく使えるUXを提供すること。
例えばカーナビは古くからある車載製品ですが、基本的な操作性は昔からあまり変わっていない。だから最近はカーナビより便利なスマホのナビ機能を使う人が増えています。
もし自動運転車にスマホやタブレットのような機能が組み込まれたら、ユーザーは同等の操作感を期待するはず。
「車だからこんな感じでいいよね」ではなく、デジタル社会で暮らす現代の人たちが満足できるUXを追求したいと考えています。