"テスラ越え"目指すTuringの1台目開発の舞台裏 「自分たちならできる」実感はなぜ大事なのか

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――今年1月に初のエンドユーザー向け製品となる『THE 1st TURING CAR』を発売しました。なぜこのタイミングで、しかも「1台限定」で販売したのですか?

青木エンジニアにとって「自分が書いたプログラムで車が動く」というのはワクワクする体験で、ものづくりの楽しさが手に取るように実感できる時間だと思います。

ただ、気を付けなければいけないのが、目の前の研究開発に夢中になりすぎて、単なる研究部隊になってしまうことです。

今取り組んでいることが楽しいゆえに、放っておくと自分の研究を論文で発表して満足してしまう、といったことになりかねません。

テスラを超えるために必要なこと

Turingが目指すのはあくまで自動車メーカーであり、テスラを超えるにはプロダクトを完成させてユーザーに売らなければいけない。

ところがエンジニアが集まると、どうしても技術の追求に目が向いてしまい、「誰のためにこのプロダクトを開発しているのか」「つくったものをどうやってお金にするのか」などを見失いがちです。

私は創業当初から、そんな事態に陥ることだけは避けなくてはいけないと危機感を抱いていました。だから「車を造って売る」というプロセスを一度回してみるべきだと考えたんです。

まずは1台でいいから売ってみれば、エンジニアも「自分たちは研究するためではなく、プロダクトを売るためにこの会社にいるのだ」と実感できる。それが『THE 1st TURING CAR』のプロジェクトをスタートさせた理由です。

ーーまだ実体のないプロダクトだからこそ、実感が必要だったのですね。

青木そうですね。まずは1台売ったことで「Turingは自動車を造って売る会社なのだ」と社内外に示す実績をつくれたのは、よかったですね。

最終到達点と比較すると小さな出来事かもしれませんが、この小さな有言実行こそ、エンジニアを含めた全メンバーの自信になったと思いますし、「テスラを超える完全自動運転EVの量産メーカーになる」というゴールを改めて全員で強く意識できたのは大きな収穫でした。

自分たちのアイデアや技術を製品に落とし込む過程をメンバー全員で楽しむことができたと同時に、お互いの強みや性格をより深く知ることができましたし。

「この人にはこんな一面もあるんだ」といった発見も多かったので、Turingが次のステップへ進むときは、他のメンバーの思考や行動をより解像度高く理解しながらチームワークを発揮できると思います。

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