"テスラ越え"目指すTuringの1台目開発の舞台裏 「自分たちならできる」実感はなぜ大事なのか
――渡邉さんは『THE 1st TURING CAR』のプロジェクトオーナーを務めたとお聞きしました。今回の開発の概要を教えてください。
どうしたら「まず1台」を達成できるか逆算して考えたとき、いきなり完成車を目指すのではなく、まずは自動運転システムを既存の車体に搭載するところから始めようとゴールを決めました。
結果、『THE 1st TURING CAR』はレクサスRX450hをベースに、自社開発した自動運転システムを搭載する形で落ち着くことに。
3年後の25年に「レベル2の自動運転機能を備えた独自のEV車を100台販売」という目標を見据えていることもあり、自動運転レベルはレベル2相当に設定しました。
いわば改造車なので、ハードウエアで追加したのはカメラとコンピューター、ディスプレーくらい。なので、今回のプロジェクトに関しては、IVI(車載インフォテイメント)開発と呼ばれるソフトウエア領域の開発が中心でした。
「自動運転の可視化」
ーー完成車メーカーと聞くとハードの印象が強いですが、AI技術がコアとなる自動運転車だと様相が違ってくるのですね。完全自動運転車の開発において、IVIはどんな重要性を持つのでしょうか。
渡邉:現時点におけるIVIの重要な機能は「自動運転の可視化」です。おっしゃるとおり、完全自動運転車のコア技術はAIですが、一般の人からすればAIがどうやって周辺の状況を認識し、次の行動を判断しているのかよく分からない。
分からないものに運転を任せるのは不安だと感じる人も多いでしょう。そこで重要になるのがIVIです。
例えば、『THE 1st TURING CAR』では、車内に設置したディスプレーにカメラの映像をリアルタイムで映し、AIが道路の白線や前を走る車、進行方向などをどのように認識しているかを表示しました。
世の中にレベル5が普及して自動運転が当たり前になるまでは、運転者に安心を与えるIVIの可視化機能が必要になると考えています。