トヨタ会長「再任賛成率の急落」にみる株主の変容 総会での賛成率が2022年から11ポイント低下
結局、株主提案への賛成率は15.06%にとどまり、否決された。
定款変更には、出席株主の3分の2以上の賛成が必要となる。取締役選任など過半数で成立する議案よりハードルは高い。提案することで環境問題への注目を集めることが目的だったと思われる。
トヨタは総会を無事に乗り切ったが、多くの上場企業で株主総会が本格化するのはこれからだ。6月29日には東証上場(3月期決算)全体の26%に当たる595社で総会が開かれる。株主提案を受けた企業は90社にのぼり、過去最高だった昨年の77社を上回る。
取締役会や社外取締役の独立性が厳しく問われるのは、もちろんトヨタだけではない。
「これまではメインバンク出身の社外取締役には独立性がないと判断されてきた。今は主幹事証券会社や株式の持ち合い先の出身者も同様に独立性がないとみなす機関投資家が出てきている。株主側の判断基準は年々厳しくなっている」。大和総研の鈴木裕・主席研究員はそう指摘する。
気候変動問題への姿勢が一般に問われる時代
また気候変動に関するトヨタへの株主提案は、機関投資家が一般企業に対しても気候変動への取り組みをシビアに判断する時代が到来したことを示している。
株主提案を行う主体は、これまで非政府組織(NGO)や環境団体が中心だった。電力卸のJ-POWER(電源開発)に対しては昨年、今年と2年連続でフランスのアムンディなど資産運用会社が株主提案を行っているが、同社はエネルギー関連企業だ。
株主提案がされていないからといって安心はできない。グラスルイスは「取締役会レベルで気候変動に対する取り組みを監督する体制が整っていない」として、日産自動車の内田誠社長の取締役再任に反対を推奨している。
株価や業績の向上は当然。ガバナンス体制の整備や環境問題への取り組みも怠ってはならない。加えて、株主といかに対話していくか。経営に求められるものは増える一方だ。
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