苫小牧に注目「CO2を地中に埋める」技術の今 大きな転換期にある「CCS」の先端を取材した

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今回の目的は、まず「苫小牧CCS実証試験センター」を取材すること。現地に到着すると、そこは今や北海道で唯一の石油精製施設となった出光興産北海道製油所だった。

日本CCS調査は、経済産業省からCCSに関連する各種の事業を行う受託事業者として2008年に設立され、出光興産から敷地の一部を借りて実証試験を行っている。

2012年から施設の建設や坑井の掘削など準備を行い、2016年から地中にCO2圧入を行い、2019年11月22日に当初目標の30万トンの圧入を達成したことで、圧入を停止。現在はモニタリングのみを行っている段階だ。

苫小牧CCS実証試験センターの敷地内の様子(筆者撮影)

30万トンというCO2圧入量の根拠は、出光興産北海道製油所から受け取るガスの量に関係している。

石油製品の精製過程で使う高純度水素ガスを得るPSA(プレッシャー・スイング・アドソープション:圧力スイング吸着)装置を経た「PSAオフガス」は、成分の約50%がCO2で約40%が水素、そして残りがメタンなどの炭素を含む燃えるガスだ。

このガス中のCO2の量が最大600トン/日で、年間で約20万トンとなるが、製油所の定期修理などを考慮して、その半分の年間約10万トンをCCS実証実験で使用。実証期間が約3年であるため、今回の実証試験として地中に埋めるCO2総量を30万トンと定めた。

日本CCS調査の資料に基づき、CCSの仕組みを簡単に紹介しよう。CO2を埋める地層を「貯留層(ちょりゅうそう)」と呼ぶ。

貯留層には、砂岩や火山岩類などすき間のある地層が適しているとされ、その上にCO2を通さない「ふた」の役目を果たす泥岩などでできた地層、「遮蔽層(しゃへいそう)」が必要だ。

苫小牧CCS大規模実証試験では、前述のPSAオフガスからCO2放散塔と低圧フラッシュ塔(LPFT)という2つのCO2回収塔で、CO2吸収液に活性化アミンを使って回収する。

圧縮したCO2を海底下に送る圧入井(筆者撮影)

得られたCO2を圧縮して、2つの「圧入井(あつにゅうせい)」から沖合の海底下・深度1000~1200mの萌別層(もえべつそう:砂岩)と、2400~3000mの滝ノ上層T1部類(火山岩類)に向かってCO2を送った。

結果的には、約30万トンのほとんどが、深度の浅い萌別層に入った。深度の深い滝ノ上層T1部類は98トンのみで、当初の調査での予測のような圧入量は得られなかったという。こうした実証実験全体での設備建設費用は、約300億円である。

よくある4つの質問

今回の取材の中で、日本CCS調査の視察者から「よく聞かれる質問」が4つあると説明された。1つ目は、「埋めたCO2が、地中や海中に漏れ出さないのか」。

これについては、苫小牧CCS大規模実証試験を含めて、世界各地のCCS関連施設で各種の観測機器を使ったモニタリングを行っており、現時点で大きな問題は生じていないという。

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