こうした中、苫小牧市は2022年3月、「苫小牧市再生可能エネルギー基本戦略」を発表した。2021年8月に行った「苫小牧市ゼロカーボンシティ宣言」と産業振興の両立を図る施策である。
具体的には、CCSにUtilization(利用)を加えた発想であるCCUSやカーボンリサイクル、再生可能エネルギー、水素を含めた苫小牧市としての検討会や推進協議会、さらに国やNEDO事業を苫小牧市が環境関連の施策として一体化した形である。
苫小牧市が民間事業者に対して、プロジェクト誘致や雇用確保などを戦略的にアプローチしていく仕組みだ。
苫小牧市としては、CCS大規模実証試験をきっかけとした「次世代の町づくり」を着実に進めていくことになる。また今後について、苫小牧市は独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の令和5年度「先進的CCS事業の実施に係わる調査」に応募したところであり、さらなる活性化が考えられている。
同取材後、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は2023年6月13日、「先進的CCS事業」として、苫小牧地域CCSを含む全国7つの事案について認定した。
「作る」と「使う」のバランスの中で
最後に、日本におけるCCSの今後について私見を述べたい。最も大事なことは、CCSやCCUSを含め、カーボンニュートラルに向けた「社会全体のエネルギー需給バランス」の取り方だと思う。
カーボンニュートラルに対するグランドデザインは、大枠としては菅政権時の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」をベースに、岸田政権が2023年2月に閣議決定した「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」がある。
また、地域社会でもさまざまな計画や戦略があり、今回取材した苫小牧市には「苫小牧市再生可能エネルギー基本戦略」が構築されている。
そうした中で各方面と意見交換して感じるのは、エネルギーを「作る側」と、エネルギーを「使う側」がまだ、いわゆる「鶏が先か、卵が先か」という議論の中にいるということだ。
また、カーボンニュートラルという枠組みに限らず、「再生可能エネルギー100%の地産地消が理想的だ」という声も多い。だが、化石由来の燃料等を使う既存産業において、カーボンニュートラルに向けてCCSという考え方も受け入れざるを得ないのが現実だろう。
本来、CCSはカーボンニュートラル実現に向けた緩衝/調整装置(バッファー)であり、地球全体がCCSに頼る割合を低くすることが望ましい。
今、事業としてCCSへ投資が集まり始めているところだが、投資による国際的な競争に日本が振り回されることを望む人はいないはずである。「地球の明るい未来」からバックキャストするようなCCSのあり方を、いまこそ日本国内でしっかりと議論していくべきだろう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら