謝罪文で「サクラによる質問」に焦点を当てることで、こうした悪い印象を与える問題から注目を逸らし、問題を矮小化しようとしているように私には見える。
「リクナビ」にまつわる不祥事は今回が初めてではない
さて、今回の「矮小化作戦」だが、これまでのところ功を奏しているように見える。
メディアの報道もリクルートの謝罪文をそのまま引用しただけの記事が多く、ネットを見ても「最初から『よくある質問にこういうのがあります』と講師が振れば良かったのに」など同情的な声が少なくない。
学生の集まりを「動物園」と形容していたことや、広範囲でサクラ行為が行われていたことを考慮すると、今回の会社の対応がいかに「うまい」ものだったかわかるはずだ。
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また、「リクナビ」にまつわる不祥事は、何も今回が初めてではない。2019年には「リクナビ」を利用した学生の内定辞退率を予測したデータが無断で企業に販売されていた問題で、政府の個人情報保護委員会からは勧告を、さらに東京労働局からは職業安定法違反で指導を受けている。その結果、データ提供サービスは廃止に追い込まれた。ちなみに、このときリクルートは「プレスリリースで」謝罪し、再発防止策を発表している。
現代のビジネスシーン、特にリクルートのような「先駆的な大企業」では、チャットをはじめとした「文字によるコミュニケーション」が支配的だ。これは組織的に違法行為などを行ってしまった場合は、詳細な「証拠」が残ってしまうということだ。現在の従業員、あるいは元従業員などからの流出の危険に企業は常に晒されている。
不祥事の拡散を小手先の「広報テクニック」で抑えることも大事だろう。だが、はるかに重要なのは不祥事が起き続ける企業文化の見直しではないか。
一般的にベンチャー企業は法令遵守などの意識に甘いところがある。「ベンチャーなのだから」という言葉を免罪符に、目的の達成が最優先で多少の「やんちゃ」は許されると勘違いしている節がある。今やリクルートは日本有数の巨大企業だが、いまだにそうした悪い意味での「ベンチャー気質」を残しているのかもしれない。
かなり以前に「臭い匂いは元から絶たなきゃダメ!」とうたう消臭剤のCMがあったが、不祥事も同様。「元から断つ」必要があるのではないか。
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