この謝罪文だが、どこが「(悪い意味で)うまい」のか。ひとつは謝罪文を公開した場所だ。前述の通り、掲載場所は「リクナビ」だ。トップページに「『学生向けオンラインセミナー』に関する一部報道について」と題し、謝罪文へのリンクが張ってある。
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その一方で、運営会社であるリクルートのプレスリリース掲載ページには、今回の「謝罪文」は一切、掲載されていない。
つまり、今回の謝罪文はあくまで「リクナビ利用者に宛てた、お知らせ」であって、企業として広く社会に向けて発信するプレスリリースではないということだ。企業の発表形式として、「お知らせ」はプレスリリースより「扱いが軽い」のは言うまでもない。
「お知らせ」として発表するメリットは、そもそもプレスリリースではないので、自分からメディアに向けて送る必要がないということだ。「ネットなどでお知らせを見つけた記者が記事にするのは仕方がないが、自ら知らせるつもりはない」ということなのだろう。
サクラは、あくまで「学生のためだった」と強調
とはいえ、プレスリリースではないからと言って、当然、記事化を抑えられるわけではない。プレスリリース形式を取らなかったことには、それよりもはるかに大きなメリットがある。それは「頃合いを見て、完全に自社サイトから消せる」ことだ。
プレスリリースは自社サイトに公開したら、サイトの大幅リニューアルなどがない限り、掲載し続けるものだ。実際、リクルートも1999年4月の発表分までプレスリリースを遡って読むことができる。だが、今回の謝罪文はそもそもプレスリリースではないので、掲載し続ける必要はない。近々「リクナビ」から謝罪文が完全に削除されたり、遷移先のURLがトップ画面から踏めなくなるなど、なんらかの対策が取られるのは確実だ。
掲載場所に加え、もうひとつ「うまい」点が「誘導方法」だ。メディアやネット世論の追及を最小限に抑えるため、謝罪文では「サクラ」を行った理由をこのように述べている。
つまり「サクラ」を行ったのは、あくまで「質問しやすい雰囲気作りのきっかけ」のため、つまり「自分たちの利益のため」ではなく、あくまで「学生のためだった」と強調しているのだ。
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