ところで、前述のように、韓国株は年初来騰落率において、4月まで日本株を大きくアウトパフォームしていた。
では、同国の経済状況は良好なのだろうか。韓国では、合計特殊出生率が1を大きく下回り、日本よりも少子化問題は深刻とされている。同国の生産年齢人口がピークに達したのは2019年である。日本で生産年齢人口がピークに達したのは1995年だったが、それ以降日本ではデフレと経済不況が起きて「失われた20年」が始まった。
なぜ生産年齢人口のピーク後も経済成長できているのか
ということは、韓国でも今後、経済が停滞するのだろうか。実は韓国では、生産年齢人口がピークに達して数年が経過、働き手の減少が続くという見通しは強まっているが、経済停滞が始まる兆しは見られない。
コロナ禍後の実質GDPの推移を見ると、コロナ禍前の2019年12月と比べて、2023年1~3月の韓国GDPは5%増えており、先進国の中でも経済回復が早かったアメリカとほぼ同様の経済成長を実現した。少なくとも、ヨーロッパや日本よりもコロナ禍後の経済成長ペースは速い。
なお、韓国でも2022年以降、インフレ率は上昇している。インフレ率(コア)は2023年4月時点で前年同月比4.6%までに上昇している。それに対して中央銀行が2023年1月に政策金利を3.5%まで引き上げ、その後は政策金利を据え置いている。アメリカやヨーロッパと比べると高インフレ制御に成功しつつ、経済成長を保っている。ちなみに2023年4月の失業率は2.6%と、コロナ禍前よりも改善している。
同国では、生産年齢人口がピークに達したあとも、1990年代後半の日本が経験したように、経済成長停滞やデフレに陥る兆候はない。筆者は同国について普段あまりウォッチしていないので知見は限られているのだが、不動産価格の下落などの問題がまったくないわけではない。
それでも経済指標を見る限り、「コロナ禍」と「現役世代の人口減少」という相応の変化があっても、同国の経済は深刻な状況に直面していないように見える。
先述のように、日本では生産年齢人口がピークに達した1990年代後半以降、長年のデフレと低成長に直面した。そのため、「労働力減少や少子高齢化がデフレや経済停滞の主たる要因」との見方はいまだに根強い。
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