だが、筆者自身は、人口動態が経済成長率やインフレに及ぼす影響は決定的に大きくはなく、「人口減でデフレになる」「働き手が増えなければ経済成長は難しい」などは妥当ではない議論と考えている。そもそも人口が減っても、1人当たりGDPを増やすことで経済的な豊かさを高めることができるし、このため人口や働き手が減少してもデフレになるとは限らない。
最近の韓国経済の経験は、現役世代の人口が減少に転じても、マクロ安定化政策を間違えなければ経済成長は可能であることを示す、1つの証左になるかもしれない。
そうであれば、長期にわたりデフレに陥り、名目経済成長がほとんど増えなかったかつての日本経済の停滞は、人口動態が引き起こしたのではなく、当時の不十分な金融財政政策の帰結ということになるのだろう。だからこそ、安倍政権下での2013年の金融緩和転換で、デフレではない状況が到来した、ということになる。
岸田政権下でも名目3%程度の経済成長は可能
さて、岸田政権の経済政策では、当初看板とされた「新しい資本主義」の政策メニューの具体策は限られる中で、現在の経済政策の目玉は「少子化対策」に移ったようである。
具体的には、子育て世代への所得支援政策を中心として、「3兆円台」の規模で政策対応が実現する方向と報じられている。これが経済成長を押し上げる効果は限定的だろうが、現役世代に対する所得分配政策は少子化対策として悪くない対応だと筆者は考えている。
ただ、内閣府などが示しているような出生率の上昇の効果があるかは、しっかり検証されているようには見えない。そして、子育て現役世代への分配政策に加えて、経済成長を一段と高める政策が必要だろう。
「2%のインフレ持続」をしっかりコミットする(結果を約束する)ための金融政策は当然であるし、それと整合的な「機動的な財政政策」のポリシーミックスが必要になる(増税・社会保険料引き上げは、それに反する政策である)。
そのうえで、規制緩和政策などの効果が高まれば、ほかの先進国同様に、日本の名目経済成長を3%程度の安定的な成長軌道も可能と筆者は考えている。
こうした経済環境を整えながら現役世代の将来所得期待を高めることが、少子化を抑制する最も確実な政策対応と位置づけられる。そして、金融財政のポリシーミックスを岸田政権が間違えないことが、「日本株復活」が長期にわたり実現する必要不可欠な条件になるだろう。
(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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