日台メディア連合がナスダック上場を目指すワケ メディアジーンを率いる今田素子CEOに直撃
――メディアジーンは日本での上場を目指していたのですか。
2017年に1度、そしてコロナ前に1度、具体的に上場の話を進めていた。ところが、いろいろな事情があり、結果的に上場できなかった。そのときには残念に感じたが、いま考えてみると、上場をしなくてよかった。もし、メディアジーン単独で日本の株式市場に上場していたらどうなっていたか。事業領域が日本国内だけに限られており、成長戦略を描き切ることができない。株主の期待に応えることは難しかったかもしれない。
それに対して、TNLとの統合による上場では世界へと市場が広がる。日本と台湾を軸としながらも、東南アジアで事業発展をできることが大きい。フィリピン、マレーシア、インドネシアなどの東南アジア諸国は、政治的にも安定していて大きな経済成長を続けている。ミレニアル世代の中間層、富裕層が急増しているこれらの地域でメディアを展開していくことができれば、爆発的な成長を図ることが可能だ。
テクノロジー進化の恩恵も大きい。いま生成AI(人工知能)が大きなブームになっているが、言語の壁を超えることができるのもAIのすばらしいところだ。いま日台をつないでSlackでやり取りをしているが、自動翻訳機能を使っているので、スムーズにコミュニケーションができている。
今後、編集者の仕事の進め方は大きく変わっていく。そうした転換期に、こうした枠組みをつくることができたのは本当にラッキーとしか言いようがない。
単独で上場するプランもあった
――メディアジーンと子会社インフォバーンの決算をみると赤字体質。経営的に苦しかったのでしょうか。
単独決算とグループ決算では異なっている。2018年2月期にはグループで赤字となったが、「Business Insider Japan」の立ち上げに伴い戦略的な投資を行ったため。2018年2月期以外はコロナ禍の影響を受けた時期を除き、基本的に黒字を維持している。
ただし、成長に限界が生じていたのは事実。2017年頃までは閲覧数の拡大に合わせて、広告収入が拡大していった。世界的にも新興ネットメディアは脚光を浴びていたが、その後、新興メディアの経営は軒並み厳しくなっていった。そうした中でも、当社が運営している全メディアが粗利ベースで黒字を維持している。経営的に苦しい、ということはなかった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら